いかに生き、いかに死ぬか

圓應寺 住職法話

住職法話 第172回

日本社会の現状
【福祉的社会学的考察】191〜196

「認知症に関する諸問題について 2」

この項の「Ⅰ 日本社会の現状」から、「Ⅴ 仏教に見る祈りと教え」まで、先月で34巡しました。今月から又、「Ⅰ 日本社会の現状」に戻って現代社会の私達の生活」を見ていきます。前回のこの項では、認知症に関する諸問題について述べましたが、今回はその後半です。

Ⅰー191 社会問題としての認知症 ① ~ 行方不明 ~

 少し古いデーターになりますが、2020年7月2日警察庁の発表によると、行方不明になる認知症の人が増え続け、2019年に警察に届け出があった行方不明者は前年より552人多い、1万7479人(延べ人数)で、7年連続で最多を更新しています。この中で245人は前年中に見つかりませんでした。又、遺体で発見されたのは460人(以前に届けられた人を含む)でした。

 さて、今年(2025年)6月5日に警察庁から発表されたデーターでは、24年の一年間に届け出があった認知症の行方不明者は1万8121人(前年比918人減)ということです。年齢別では80代以上が6割超とのことで、亡くなった状態で見つかった人は491人でした。このように認知症の方の行方不明者と死亡者は、増加・高止まりの傾向にあるのです。

Ⅰー192 社会問題としての認知症 ② ~ 山形市は一人一台の車 ~

 私が住んでいる山形は、都会の生活とは異なり、公共交通機関がイマイチのため、どうしてもマイカーの移動となり、単に高齢だからということだけで免許証返納とはいかない事情があります。一家に一台ではなく、一人一台の土地柄なのです。ここに田舎特有の問題があります。警察庁が2013年12月末現在として発表した65歳以上の免許証保有者は1534万2千人です。今後この数字は団塊の世代の高齢化に伴い益々増えていくことが予想されるのです。

 高齢者や認知症の方は事故の被害者になる一方で、加害者になるという事例が多発しています。そのため2017年3月から75歳以上の高齢ドライバーの認知症検査が強化されました。

 さて、この項の先回で取り上げた、2017年3月26日放送の「NHKスペシャル」では、認知症の高齢ドライバーは当時、252万人、2025年には350万人になると予想していました。又、2017年1月に警察庁が発表した75歳以上の死亡事故のうち、認知症や認知機能が低下している恐れのある人の割合は5割、この3年間で1.5倍に増えていると言うことです。

Ⅰー193 社会問題としての認知症 ③ ~ 認知症者の車運転 ~

 2015年10月、宮崎県で73歳の認知症として治療を受けていた方が車を運転して歩道を暴走、7人の死傷者を出す大きな事故がありました。この事故の他にも高速道路の逆走等の事故が頻発しており、その全てが認知症の方によるものではないにしても、高齢者と認知症者の事故が目立つ時代となっています。

 私の身近な経験でも、信号無視をして堂々と横切って来る車にビックリ、思わずドライバーの顔を見て二度ビックリ、よく存じ上げた方の運転でした。幸いにも事故にならず、間もなく免許証を返納したとのことでした。

Ⅰー194 社会問題としての認知症 ④ ~ 高齢者講習会 ~

 私ごとですが、高齢ドライバーとして指定の自動車学校で講習を受けました。その中で認知症検査もありましたが無事合格し、現在も日常的に運転しています。又、傘寿を迎えた一昨年(2023年)5月、山形市長寿支援課から日常生活について現況のアンケート調査がありました。その結果、10月に同課から「令和5年度『80歳節目アンケート』結果のお知らせ」が届きました。その内容は「アンケートの結果、生活機能の低下はありません。引き続き、介護予防をこころがけ、いきいきとした生活を送れるよう、今後も健康にご留意頂きお過ごし下さい。介護予防に関するご不安や困り事がある場合は、市長寿支援課またはお住まいの地区を担当する地域包括支援センターまでご相談下さい」。その上で「運動の機能は、年齢とともに低下し、特に『80歳から低下する可能性が高い』ことがわかっています。積極的に、日々の運動や活動量を増やしましょう!」(原文のまま)。というものでした。今のところは大丈夫とのことで一安心ですが、80歳を越え、日々頑張らないと・・・・。

Ⅰー195 認知症の予防 ①

 「社会問題としての認知症」というレベルまで問題になっている認知症。それではその認知症を予防する手立てはないのでしょうか。2024年8月28日、NHKラジオ第一「けんこうライフ」で再放送された内容を踏まえ、私なり考えてみたいと思います。放送では、筑波大学名誉教授・朝田隆先生(40年にわたって認知症の研究と臨床に努めて来た精神科専門医)が「認知症予防の五つのポイント」として次の内容で患者さんの生活を見直すように指導した結果、劇的に回復する方もおられるとのことです。要は「ワクワクした心、豊かな毎日を送る」ことによって「幸福感を生み出すドータミンが脳に出る」とのことです。

Ⅰー196 認知症の予防 ② ~ 五つのポイント ~

具体的には次の五項目です。

①挑戦すること
 これまでにやったことがないことにも挑戦すること。「もう歳だから・・・」ではなく、好奇心を持って挑むこと

②変化への対応
 歳を取ると新しいことにストレスを感じてしまうが、例えば散歩の道を変えるだけでも新しい発見や刺激になる。いつも同じをチョット変化させることも

③生きがいを持つこと
 若い時代には、仕事や子育てに生きがいを持ったが、退職や子供が独立した今は、植物や動物の世話、釣り、ゴルフ等々。特にボランティアなど、他人に喜んでもらえることを見つけること

④孤独を回避すること
 英国には「孤独担当大臣」も、正に国家的課題に。孤独になると脳が縮む。人とのふれ合いや交流が認知症の予防に大切。

⑤他者に尽くすこと
 人間は自分のことより、他人のために尽くす方が幸福感が大きい。ボランティア活動などが最適。

以上のポイントを持って生活習慣を見直し、「ワクワクに満ちた、心豊かな毎日が、認知症予防につながる」と力説されました。