
圓應寺 住職法話
住職法話 第167回
日本社会の現状
【福祉的社会学的考察】186〜190
「認知症に関する諸問題について 1」
この項の「Ⅰ 日本社会の現状」から、「Ⅴ 仏教に見る祈りと教え」まで、先月で33巡しました。今月から又、「Ⅰ日本社会の現状」に戻って現代社会の私達の生活を見ていきたいと思います。前回のこの項では、日本の少子化問題とともに、隣国の韓国と中国の少子化問題について考えました。今回はこれまでも触れてきましたが、認知症に関する諸問題を2回に亘って取り上げます。今回はその前半です。
Ⅰ-186 認知症、10年前に今年(2025年)は675万人と推計

「敬老の日」に合わせた厚労省発表(2024年9月17日)によると、全国の100歳以上の高齢者は、前年(23年)から2980人増え、過去最高の9万5119人になったということです。この超高齢社会の中、10年前の2015年1月7日に発表した厚労省の推計では、10年後の25年の認知症は、約675万人との推計でした。今年・2025年はいわゆる団塊の世代が75歳の後期高齢者となる時期でもあります。
Ⅰー187 昨年(2024年)の発表で、今年の「認知症の高齢者は471万人」と

2015年以来、厚労省研究班は、9年ぶりに認知症の高齢者数の推計を昨年の5月8日に発表しました。それによると前回発表の25年の認知症を大幅に減少修正し、471万人との推計に変えました。前回推計より200万人ほど減ったことになります。この減少についてその要因を研究班は「認知症の発症リスクとの関連が指摘される喫煙や食事とぃった生活習慣の改善が進んだと考えられる」(5月9日山形新聞)としています。
Ⅰー188 軽度認知障害も含めると・・・

前項の厚労省発表(24年5月8日)をより詳しく見ることにします。その予測によると
① 2040年、認知症は584万人に達する(65歳以上の高齢者の14.9%)
② 2060年には、645万人(同17.7%)となり、65歳以上の6人に一人
③ 軽度認知障害(認知症の前段階略してMCI、下記参照)は
ⅰ 40年に612万人(15.6%)、60年には632万人(17.4%)との推計
ⅱ 認知症とMCIの人をあわせると、40年には65歳以上のおよそ3人に一人が認知か
MCI症に。
おおよそこのような内容ですが、MCIについて厚労省が予測を発表したのは今回の発表が初めてです。超高齢社会へと進む日本、少子化対策のみならす介護保険制度の財政基盤と人材確保を核とした高齢者対策も緊急なのです。
※MCIとは(24.5.9朝日新聞)
「記憶力の低下などの症状があっても、家事や買い物などの日常生活では支障が出ていない状態のこと。認知症となる手前で、その後に生活機能障害が出て、認知症に移行する場合もあれば、生活習慣の見直しといった認知症予防の取り組みによって、健常な状態に戻る可能性もある。厚生労働省によると、MICの人のうち、5~10%程度の人は1年で認知症に移行する一方で、16~41%程度の人は1年で健康な状態になるという」
Ⅰ-189 NHKの予測

2017年3月26日放送の「NHKスペシャル」では番組の独自予想として、認知症の予備軍とされる「軽度認知障害」の人数を、2025年時点で「580万人を越える」と予想しました。したがって認知症の人数と合わせると約1300万人に達することになります。この人数は国民の9人に一人、65歳以上の3人に一人が認知症か軽度認知障害者という認知症社会とも言うべき時代を迎えることをNHkも予測していたのです。
Ⅰー190 政府「認知症施策の基本計画」を決定

政府は2024年12月3日の閣議で、同年1月に施行された「認知症基本法」に基づいて「認知症施策の基本計画」を決定しました。
認知症は「いまやだれもがなり得る」として、「みんなが支え合う共生社会の実現に向け取り組みを推進する」と明記しました。その上で ①新しい認知症観の普及 ②当事者の意思尊重 ③地域で安心できる暮らし ④新たな知見や技術の活用の重点目標を掲げました。具体的には、①社会参加の機会確保 ②認知症の予防 ③相談体制の整備 ④保健医療と介護福祉の充実等々12の施策です。
計画は「一人一人が自分ごととして理解し、当事者が自分らしい暮らしを続けることを考える時代が来た」として、全国の自治体に対して地域の実情や当事者の意見を反映した認知症施策の計画をまとめるよう求めています。
このように認知症について、その対応や取り組みについて国が法律(認知症基本法)を作ると共にその具体策を作り確認する時代なのです。もっとも英国には認知症の対応に専門的にとり組む省庁があるというのですから驚きです。先には先があるものです。
※政府の「認知症施策の基本計画」を受け、当山形県でも年度内(2025年3月)の策定を目指して
検討中とのことです(24.12.15付、山形新聞)。