いかに生き、いかに死ぬか

圓應寺 住職法話

住職法話 第157回

日本社会の現状
【福祉的社会学的考察】173-179

「日本の経済や景気」

 この項の「Ⅰ 日本社会の現状」から、「Ⅴ 仏教に見る祈りと教え」まで、先月で31巡しました。今月から又、「Ⅰ 日本社会の現状」に戻って現代社会の私達の生活」を見ていきます。前回はチョット気になる数値を2回に亘って取り上げましたが、今回は日本の経済や景気関係について、私の視野に入った項目を取り上げます。

Ⅰ-173 日本の国内総生産(GDP)、ドイツに抜かれ4位に ①

岩手県厳美渓

 昨年(2023年)の秋頃からささやかれていた日本の経済規模の転落がいよいよ現実になりました。これまでは米国、中国に次ぐ3位の位置にいたのですが、今年1月16日付朝日新聞に「GDP4位へ」の活字がおどりりました。

 更に、今年(24年)の2月16日には、新聞各紙に「4位に転落」決定との記事が踊りました。特に上記の朝日新聞は、「日本GDP4位に転落円安響きドイツ下回る」と題して一面に載せたほか、2面、7面、13面で多くのスペースを割いて詳報しました。

 日本のGDPの歴史は、1968年に当時の西ドイツを抜いて米国に次ぐ世界第2位になりましたが、その後2010年に中国に抜かれ第3位に。そして今回は約半世紀を経て再度ドイツに逆転されたことになります。国際通貨基金(IMF)による具体的数値は、1位米国が26兆9500億ドル、中国17兆7000億ドル,ドイツ4兆4600億ドル、日本4兆2100億ドルです。

Ⅰ-174 日本の国内総生産(GDP)ドイツに抜かれ4位に ②

 ドイツに抜かれた最大の要因は、いつも問題になる円安です。23年初めの頃は1ドル=110円台でしたが、その後は140~150円になっており、ドル換算のGDPは目減りしたのです。その他「日本ではバブル経済崩壊後、景気低迷が続いたのに対してドイツが着実に成長を積み重ねてきたことの結果」(同紙)なのです。続いて同紙は「2000年から21年にかけてモノの輸出額は日本が1.6倍になったのに対し、ドイツは3倍に膨らんだ」「(ドイツは)移民の流入などで就業者数か増えたほか、国内に高い技術を持つ企業や人材が多かったことで、海外企業からの投資も堅調に積み上がった」「(日本は)バブル崩壊後、企業は人員や遊休資産のリストラに走った。~中略~(その後)1ドル=100円を下回る円高が定着。輸出が厳しくなった家電や自動車産業は、生産拠点の海外移転を進め~中略~、22年からは大幅な円安となり、輸出には追い風となっている。主力の自動車産業などはフル操業しているが、国内にもっと生産設備があれば、円安のメリットをより享受できたとの指摘もある」と。

Ⅰ-175 日本の国内総生産(GDP)ドイツに抜かれ4位に ③

 更に「1ドル=140円もの円安なら、以前ならもっと輸出が伸びていたはずだ。国内に投資してこなかったツケが回ってきている」と三菱UFJリサーチ&コンサルティング小林真一郎氏の見解を紹介。加えて「日本は高齢化や人口減もネック」であることを指摘した上で、第一生命経済研究所の熊野英生氏の「内需が弱い国に企業は投資しない。日本企業が海外に成長の機会を求める動きは今後も止められないだろう」との見解を紹介しました。

Ⅰ-176 日本の国内総生産(GDP)ドイツに抜かれ4位に ④

 今後の見通しについて同紙は「日本は26年には名目GDPでインドにも抜かれ、5位に転落する見通し」とした上で、「人口が日本の10倍以上の中国やインドに抜かれるのは仕方ない面もあるが、人口一人あたりの名目GDPでも、22年はOECD加盟国のうち21位まで下がった。日本の経済力の低下は明らかだ」と断定。私たちがうすうす感じている経済力の低下は正に現実そのものなのです。

 「日本GDPドイツに抜かれ4位に」については、山形新聞も2024年1月21日付で「日本GDP4位転落へ円安など影響独下回り、発言力低下も」と題し、「国の経済規模は国際社会での発言力と結び付いており、世界での日本の存在感が一段と低下しそうだ」と述べてます。最後に同紙は「ただドイツ経済も厳しい。物価影響を除いた実質GDPは23年が0.3%減となり、3年ぶりのマイナス成長に陥った。24年以降に日本が3位に返り咲く可能性もある」と付け加えています。

Ⅰ-177 中国の自動車輸出、日本を抜く

 今年(2024年)1月、中国自動車工業協会から、23年の自動車輸出台数が491万台(前年比57.9%増)になったことが発表されました。この台数は400万台前半と予想される日本を抜き、「世界一が確実」とマスコミが報じました。中国は22年にドイツを抜いて2位となり、一年で世界一の座についたことになります。中国のこの成長は、輸出台数の四分の一を占める電気自動車(EV)などの新エネルギー車の急成長にあります。

 一方の日本が世界一の座から転落するのは、ドイツが一位となった2016年以来となります。EV車が出遅れている我が日本、はたして返り咲きはあるのでしょうか?一部にEV車の走行距離の短さやスタンド不足などにより、「ハイブリッド車の見直し需要」との見方もあるようですが・・・・。

Ⅰ-178 倒産4年ぶりに8000件超

 生活実感とはほど遠い株価の異常な高騰(私にはこのようにしか見えないのですが・・・)の中で、物価高、人手不足更には異常気象と能登地方の大震災。この中で2023年の負債額一千万円以上の企業倒産件数が2年連続で増加し、前年比35.1%増の8690件だったことが東京商工リサーチから24年1月に発表されました。8千件を越えるのは新型コロナ禍前以来4年ぶりです。この原因として24年1月16日付朝日新聞は「(国による)コロナ禍対策の資金繰り支援が終わったうえ、物価高や人手不足が重荷となり、経営の立ちゆかない企業が急速に増えている」と報じています。

 倒産を産業部で見ると、最多は、飲食・娯楽を含む「サービス業他」が、前年比41.6%増の2940件でした。原材料費や燃料価格の上昇、人件費の高騰や人手不足などが、重くのしかかっているのです。

Ⅰ-179 これらの一方で、日経平均株価、史上最高に、そして日銀が

 GDP4位に、自動車輸出2位にそして企業倒産8000件超の中にあって、24年2月22日の東京株式市場の終値が39,098円となりました。これは、バブル絶頂期の1984年12月に付けた最高値、38,915円を34年ぶりに上回ったことになります。これでり、よく言われる「失われた30年」を脱皮したことになるのでしょうか。この値上がりの要因は、①企業業績の好調②中国経済の低迷③アメリカの好景気④これらの要因から海外資金の流入⑤円安⑥課税対象額を上げたニーサの導入等が上げられています。

 その後、皆さんご案内のように3月4日、東京株式市場の日経平均株価が終値でもついに4万円台の大台に達し、4万0109円となりました。これを受け、マスコミ各社はこの高騰が私たちの生活を豊にしているか否かのアンケート調査を実施しましたが、何れの調査からも生活実感からかけ離れ、豊かさを感じるものでないとの結果でした。私自身も私の生活とは関係しない、何処か他人事のように思えてしまうのです。

 日本銀行は2024年3月19日、17年続けてきたマイナス金利政策を解除するなど大規模な金融緩和策の見直しを決定しました。これは今年の春闘で(大企業の賃上げが、5.28%に達し33年ぶりという記録的水準)賃上げを最終的に確認の上決定されました。日銀はこの見直しの理由について「賃金と物価の好循環の強まりが確認されてきており、2%の物価安定目標が持続的・安定的に実現していくことが見通せる状況に至ったと判断」したと説明しています。今後、労働者の約7割と言われる中小企業の賃上げはどの程度になるのでしょうか。日本経済を左右する大きな流れや決定が続きます。私たちの生活の安定と向上を期待したいものです。