いかに生き、いかに死ぬか

圓應寺 住職法話

住職法話 第104回

有限の人生そして死を意識して
【「いのち」の考察】111~116

「NHKマイあさラジオ「人とのつながりが寿命を延ばす」について 1」

 前回は「終末期医療」等に関する私の考えと相容れない意見が発表された内容を紹介すると共に、それに対する私の意見を述べました。今回はNHK「マイあさラジオ」(現在の「マイあさ」)の「健康ライフ」で、2015年6月1日から5日間に亘って放送された(18年3月5日~再放送)「人とのつながりが寿命を延ばす」の内容を3回に亘って紹介すると共に実生活について考えてみたいと思います。

Ⅲ-111 「人とのつながりが寿命を延ばす」

秋田県・田沢湖

 「人とのつながりが寿命を延ばす」と題したこの放送は、予防医学研究者で医学博士の石川善樹先生によるものです。NHKマイあさラジオ「健康ライフ」の時間帯は、私にとっては丁度朝のウオーキング時間帯と重なり、いつも携帯ラジオで耳に歩いてます。一方でかなり参考になる内容が多いこともあり、「健康ライフ」は、自宅で録音するようにしています。
 これまでの長生きの秘訣として、はたばこを吸わないこと、食べ過ぎず多種類の食物を摂ること、良き睡眠と適度な運動などがよく取り上げられてきました。しかし今回の石川先生の「人とのつながりが寿命を延ばす」の内容は、実に興味深く新鮮で考えさせられたものでした。そこで先生の学説を紹介すると共に日々の生活の質を考えてみたいと思います。

Ⅲ-112 日本人が長寿になった理由

 人生80年という長寿国・日本。先生は「20世紀に比べて人々の寿命が約30年延びた」理由として、①戦後の結核や乳幼児の死亡率が改善されたこと、②冷蔵庫の普及で食生活の塩分低下が進み脳卒中による死亡率が下がったこと。この2点を上げた上で、第3の要点として「人とのつながり」を上げたのです。
 石川先生は、イギリスの予防医学者・マーモット氏の研究を次のように紹介しました。
 「日本人の長寿は何故か? マーモット氏は日本人の移民(日本~ハワイ~北米)の寿命がどのように変化したかを調べた結果、長寿の順位は①日本で暮らしている人、②ハワイに移住した日本人、③ハワイからアメリカ本土に移住した日本人、という順位となったということです。つまり日本から離れるに従って寿命が短くなっていったという内容です。この背景には日本人の『人とのつながり』があることをマーモット氏が述べていることを紹介したのです。」
その上で石川先生は、人とふれあうことが無い「孤独」はストレスも溜まり寿命に悪いこと。人とのつながりは、やり甲斐や張り合いが持てると説明。さらに自立性の大切さについても学説を紹介しました。

Ⅲ-113 所属先の数で寿命が決まる

 千葉大学の65歳上を対象にした「どのような人が要介護になりやすいのか?」についての調査を紹介。その結果は、要介護状態になりにくい人は、所属している組織の数が多いほどなりにくく、自治会や老人会などの組織に3つ以上所属していると介護になる確率が22%減るというものでした。
 多くの組織に所属することによって外出の機会も増えて体を動かす機会も増えることが好結果を生むとともに、組織の中で役割を持つことによって「張り合い」が生まれることも影響している」ということです。

Ⅲ-114 役員をやると寿命が伸びる!? ~役員を引き受けると寿命が延びる、趣味やスポーツが ①~

 一般的に地域やPTAの役員などをやるとストレスが多く寿命に悪いと思われがちですが、石川先生は「組織の代表や役員を引き受けると寿命が延びる」というのです。普通は役を引き受けると責任が重くなり、やりたがらない傾向にあると思うのですが、役員をすると男性は5%、女性は17%死亡率が減るという調査結果があることが紹介されました。先生によると「代表や役員は組織をコントロールしてその組織の運営、何をやり何をしないかのなどの決定に関わり、生きがいや責任感が生まれ、物事を自分で判断する自律性が出る」ことになるということです。
 所属する組織や団体については、趣味やスポーツの団体が特に良いとのことですが、ちなみに健康寿命にとって「スポーツは一人でやるものよりは、他人と一緒にやり、仲良くわいわいやるもの、例えばラジオ体操や太極拳などが良く、勝負に関わりのないものが良い」のだそうです。

Ⅲ-115 役員をやると寿命が伸びる!? ~役員を引き受けると寿命が延びる、趣味やスポーツが ②~

 ところで私が住職の圓應寺の隣には、地域住民が日常的に利用できる公園があります。子供達が野球、サッカーなどを楽しんだり高齢者も時にグランドゴルフ大会などをしています。しかし10数年前までは毎早朝、そうです本当に朝早くからゲートボールを楽しむ人々で賑わっていました。早朝の空気が未だ冷たい時間帯に「カーン」と響き渡る結構大きな音が聞こえてきました。日曜日の日中には大会が開かれ大勢の人が集まっていました。ところが近年はその姿を見ることは全くなくなりました。いろんな理由があるのでしょうが、他の高齢者スポーツの健在を考えると「ゲートボールには『仲良くわいわい』という中身だけではない」という話を聞いたことがあるのですが、この項と何処かで繋がっているような気がするのですが…。

Ⅲ-116 孤独が好きな人

 孤独が好きな人は一人の場を好みます。これも大きく遺伝子が影響しているのだそうです。もし悪い病気が大流行した場合、絶滅を避けるためにこのような孤独遺伝子が有るのではないかという考え方なのだそうです。
 その上で先生は「孤独が好きな人は無理して人とのつながりを求めなくとも良い。無理をすればストレスが溜まり良くない」と。