いかに生き、いかに死ぬか

圓應寺 住職法話

住職法話 第48回

緩和ケア医療に学ぶ生と死
【生と死の考察】49~53

「公益財団法人 日本ホスピス・緩和ケア研究振興財団の調査について 前半」

 前回のこの項では、最期を迎える場所の希望。そしてして死期が近い患者さんの想いと状態について述べましたが、今回は前回のこの項で取り上げた、公益財団法人「日本ホスピス・緩和ケア研究振興財団」の調査についてその前半を紹介します。
 同財団は2012年2月、全国の男女1,000人 を対象に『余命が限られた場合、どのような医療を受け、どのような最期を過ごしたいか 』についてアンケート調査を実施し、その結果を発表しました。その内容は、現代日本の緩和ケア医療の実態と一般国民の「いのち」と「医療」に対する考え方の現況をよく表しており、今後の示唆に富んだものとなっています。
 以下、その調査結果の概要を二回にわたって紹介します。今回は前半です。

Ⅱ-49. 日本ホスピス・緩和ケア研究振興財団の調査 ①

◆ 「もしあなたががんにかかったとしたら、その事実を知りたいですか」という設問に対して。

 全体の74.9%が「治る見込みがあってもなくても、知りたい」と回答し、「直る見込みがあれば知りたい」(12.4%)を大きく上回りました。性別での特徴はありませんが、年齢層別でみると、40代と70歳以上で「治る見込みがあってもなくても、知りたい」という絶対告知派が8割を超えていましたが、20代と60代では7割を下回っており、「分からない」とする回答が1割を超えています。絶対告知派は40代をピークに50代、60代で回答率が低い傾向にありますが、70代では8割を超えたことから、年齢が高くなるほど絶対告知派が減少するとはいえません。 また過去の調査と比較すると、「治る見込みがあってもなくても、知りたい」と回答した人は、2005年調査70.9%→2008年調査72.1%→今回調査74.9%と微増しています。

Ⅱ-50. 日本ホスピス・緩和ケア研究振興財団の調査 ②

図2 余命が限られている場合、自宅で過ごしたいか(性・年齢別)

◆ 「もしあなたががんで余命が1~2ヶ月に限られるようになったとしたら、自宅で最期を過ごしたいと思いますか」の設問に対して。

 「自宅では過ごしたくない」と回答した人は9.8%にとどまり、8割以上が自宅で過ごしたいと考えています。しかし「自宅で過ごしたいが、実現は難しいと思う」と回答した人が63.1%の一方で、「自宅で過ごしたいし、実現可能だと思う」と考えている人は18.3%しかおらず、多くの人は、実際には自宅では過ごせないと感じています。性別でみると、自宅で過ごしたいと思っている人(「自宅で過ごしたいが、実現は難しいと思う」+「自宅で過ごしたいし、実現可能だと思う」)は男性で82.5%、女性で80.1%とどちらも8割を超えていますが、女性では「自宅で過ごしたいが、実現は難しいと思う」人が71.9%にのぼり、「自宅で過ごしたいし、実現可能だと思う」人はわずか8.2%にとどまり、男性の「自宅で過ごしたいし、実現可能だと思う」の28.3%に対して、20ポイント近い開きがありました。男女の介護力の差、より女性が現実的と言えるのでしょうか。

Ⅱ-51. 日本ホスピス・緩和ケア研究振興財団の調査 ③

図3 自宅で最期を過ごせるために必要な条件(3つまで選択)

◆ 「『治る見込みがない病気で余命が限られているのなら、自宅で最期を過ごしたい』という意見がありますが、そのためには、どのような条件が必要だと思いますか」の設問に対して。

 あてはまるものを3つまで選んでもらったところ、「介護してくれる家族がいること」(63.4%)、「家族に負担があまりかからないこと」(50.0%)の回答率が半数を超え、介護する家族の存在と負担軽減が課題であることが分かります。2008年調査と比較すると、「家族に負担があまりかからないこと」の回答率が5ポイント以上高くなっています。
 また、「急変時の医療体制があること」や「自宅に往診してくれる医師がいること」という回答率も高く、余命が限られている場合、自宅で最期を過ごすためには家族とホームドクターの存在が不可欠であると考える人が多いのは、2005年調査以降、一貫して同じ傾向を示しています。

Ⅱ-52. 日本ホスピス・緩和ケア研究振興財団の調査 ④

図4 ホスピス・緩和ケア病棟の認知度

◆ 「生命をおびやかす病気にかかった場合、可能な限り人間らしく快適な生活を送られるように援助するケアを『ホスピス・緩和ケア』と言います。このようなケアをする医療施設を『ホスピス病棟』あるいは『緩和ケア病棟』と呼んでいますが、あなたは、これらについてご存知でしたか」の設問に対して。

 「よく知っている」と回答した人は13.0%、「ある程度は知っている」と回答した人(48.4%)を合わせると、61.4%の人はある程度以上は知っているという結果となりました。しかし、「ホスピス・緩和ケアを希望した場合、自宅で療養することも可能です。あなたは在宅でこうしたケアが受けられることをご存知でしたか」の問いには、「知っている」と回答した人は、ホスピス・緩和ケア病棟を知っている人のうち、37.5%にとどまりました。過去の調査と比較すると、2005年調査37.8%→2008年調査39.1%→今回調査35.1%となっており、過去最低となりました。
 この様に、一般の方々の「在宅緩和医療」についての知識は大変低い状態です。国は入院から在宅医療の推進を目指しているようですが、一般のホームドクター制度がまだまだの中にあって、特に在宅緩和ケア医師の少なさがこの様な結果になっているのではないでしょうか。

Ⅱ-53. 日本ホスピス・緩和ケア研究振興財団の調査 ⑤

図5 医療用麻薬のイメージ(複数回答)

◆ 「医療用麻薬にどのようなイメージをお持ちですか」(複数回答)の設問に対して。

 回答率が最も高かったのは「痛みが和らぐ」(81.5%)、次いで「最後の手段だと思う」(59.0%)、「副作用がある」(49.4%)が続きました。一方、「寿命が縮むと思う」(13.7%)、「中毒になる」(11.8%)は1割程度と少なかったものの、「最後の手段‥」の回答率が高く、医療用麻薬の正しい知識もまだまだというのが実態のようです。