圓應寺 住職法話
住職法話 第13回
緩和ケア医療に学ぶ生と死
【生と死の考察】9~14
「緩和ケア病棟での“生活” 山形県立中央病院緩和ケア病棟例1」
今回のこの項では、緩和ケア病棟での“生活”について述べます。ここで私はあえて「生活」という言葉をつかいました。患者さんは入院中ですので、一般的には「入院治療」という言葉の方が相応しいと思います。しかし緩和ケア病棟では、勿論患者さんの治療をしないということではありませんが、患者さん自身のQOLを重視し、その人らしい生活をおくっていただくことを重視する病棟だからです。以下、その「生活」の中身について山形県立中央病院緩和ケア病棟を例に述べます。
Ⅱ-9.「入院生活」の特徴 ~静けさ~
平成13年5月の新病院新築移転に併せて新しく緩和ケア病棟が開設されました。開設に至る経過の中では、病院本体の最上階(9階)案が出たこともありましたが、「地に足がつく一階、それも独立棟で!」との願いが叶いました。写真は(以前にも添付しましたが)緩和ケア病棟に至る敷地内道路と専用の玄関です。この玄関から緩和ケア病棟に一歩足を踏み入れると、一般病棟との違いに直ぐ気付きます。まず、「静けさ」です。職員が走り回るという光景はまずありません。全室が個室となっており、病棟内には静かな音楽が流れ、それがかえって静けさを醸し出しています。患者さんはガンと闘うための大きな手術等はありませんので、治療に追われるという状況下にはありません。緩和ケアの治療そのものが肉体的精神的痛みを緩和することを主体にした治療であり病棟だからです。
Ⅱ-10.「入院生活」の特徴 ~自由(面会)~
先ず面会についてです。一般の病棟は治療や検査等そして「安静」などの関係で、面会時間が規制されているのが普通です。しかし緩和ケア病棟の場合は、基本的に自由です。前項9の玄関は24時間出入りが可能です(夜間は病棟職員に連絡して)。したがってご家族の都合などで夜遅くなった場合でも面会が出来るようになっています。
Ⅱ-11.「入院生活」の特徴 ~自由(外出)~
病棟が一階にあることによって、患者さんは自由にしかも気軽に専用の中庭や、病院隣接の「県民の森」を散策できます。中庭は、病棟スタッフやボランティアが管理して、四季折々の草花が楽しめます。「県民の森」には、自分の病室から直接徒歩や車いすで出かけることが出来ます。毎日の入院生活の中で、土に足を踏むことが出来ることは大きな安らぎとなります。ご家族やボランティアに車いすを押して貰って散策する患者さんの姿をよくお見受けいたします。
Ⅱ-12.「入院生活」の特徴 ~自由(外泊)~
山形には、盆栽や草花が大好きな方が大勢おります。山形の住まいの特徴は、庭がある自宅が大変多いことが上げられます。そのため半日でも2~3時間でも自宅に帰り庭木の手入れを希望される患者さんがおりますし、会社や、買い物等々に希望に添っての外出がありますが、家族と一緒に小旅行を楽しむこともあります。山形県は、全国唯一全市町村に温泉があります。2泊3日などの温泉団らんは、患者さんと家族を結ぶ大きな絆となります。
Ⅱ-13.「入院生活」の特徴 ~自由(食事・ペットなど)~
病院給食は勿論ありますが、ご自身の食べたいもの、飲みたいものは原則として 自由です。病棟内には専用の厨房があり、ここでご家族が料理したもの、あるいは自宅から持ってきたものを食べても良いのです。食べ物だけでなく、「大好きなアルコール」もOKです。
但し、タバコだけはご遠慮いただいております。この他、犬、猫などのペットも病室内ではOKです。愛犬などをベットの上で抱き、久しぶりの再会を双方が喜ぶ姿があります。患者さんの心の癒しには最高かもしれません。
Ⅱ-14.「入院生活」の特徴 ~自由(ボランティアと)~
比較的元気な患者さんは、希望によって談話室での食事も可能です。ご家族や友人、場合によっては他の患者さんと一緒に食事をすることもあります。一人だけの病室より会話を楽しみながらの食事の方が、食欲が進むようです。又、午後には、同じ談話室でボランティアによる「ティーサービス」があります。ボランティアとの会話は病院外のニュースを織り交ぜて、閉塞的になりがちな患者さんの生活に刺激を与えます。場合によってボランティアは病室を訪れ、患者さんの悩みなどの個人的想いをお聴きする「傾聴ボランティア」としても活動しています。
その他、病室にパソコンを持ち込んで仕事、インターネット、メール。人によっては自分史を書きつづる患者さんもおられます。
このように病棟生活の中身は、出来るだけ自宅の生活に近くなるよう配慮してあります。これが緩和ケア病棟生活の特徴です。
【補正】医療費の改定
◆昨年の11月に述べました。医療費は、この四月から改訂されます
- 緩和ケア病棟入院費(一日)
・3月まで 37,800円
・4月以降
・入院30日以内 47,800円
・入院30~60日 42,800円
・入院61日以上 32,800円 - 外来緩和ケアに報酬新設3,000円(月1回)
- 在宅緩和医療にも同行の専門医師・看護師に一定額の診療報酬新設
※自己負担は国保の場合上記の3割