住職法話

住職法話 「いかに生き、いかに死ぬか」

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第106回

(令和2年1月1日)
X.仏教に見る祈りと教え

 皆様、明けましておめでとうございます。
 「令和」最初の正月を迎えました。昨年は、日本列島に自然災害が多発し、大きな被害に遭ってしまいました……。昨年の正月にも同じような記載で「昨年も日本列島は、大阪北部と北海道胆振東部地震、岡山県を中心とした西日本豪雨、そして度重なる台風の上陸等々大きな自然災害に見舞われました。
 私達人間の力でその発生を予防出来ることは数少ないと思いますが、少なくともより気象変動を増幅すると言われる『気象温暖化』対策だけは私達の叡智によって対応できるのではないでしょうか。何処かの自国ファースト第一主義大統領の考え方はいかがなものでしょうか。その上で『平成』最後の正月に当たり、新しい元号を迎えるこの一年が平穏無事であることを心から祈るものです。」
と述べました。2年続けて同じ思いですが、改めてこの一年の平穏無事を心から願うものです。
 さて、この項の前回は、お大師様名言シリーズを一時中断して山形県置賜三十三観音巡礼について述べました。今回はシリーズに戻りお大師様名言シリーズの続き(4回目)です。これまでも述べましたが、お大師様の名言は沢山あり、その中でも私がよく使わせて頂いているものを紹介しています。その他の名言については、「言い伝え」同様に専門家が多くの書籍で紹介しておりますのでそちらをご覧下さい。

Xー116 空海の名言N

「衣を染めて心を染めず」)(「秘蔵宝鑰」)

 「衣を染めて心を染めず」の前に本来は「頭を剃って欲を剃らず」の言葉があります。全体を読むと内容がよりはっきりします。頭を剃って欲を剃らず表面だけ僧になっても、そして紫や朱色の衣(ころも)を着ても心の清浄が伴わなければなんにもならないという意味でしょう。
 拙衲も頭を剃り、テルテル頭に紫衣ですが、このお大師様の忠告を日々胸にしなければならないと思っているのですが……。

Xー117 空海の名言O

「身は華と与(とも)に落ちぬれども、心は香と将(とも)に飛ぶ」(『性霊集』)

 お大師のこの言葉は、私たちのこの肉体は、咲き開いた花がやがて散るようにいつかは落ちてしまいますが、人の生き様や心は、花の香りが散った後も残された人々の心に残るという意味でしょうか。
 私は、間もなく目を落とす心親しい人に掛ける最後の言葉は「○○さん!貴方のことはズット忘れないよ!」です。亡くなろうとしている人は孤独です。その孤独感いっぱいの方にとって何らかの支えになって頂けたら……との言葉ですが、これは同時に「私の心の底に貴方はこれからも生き続ける」ことを伝えると共に、私自身がその方の想いを忘れないための言葉でもあるのです。
 誰もが知っているように、私たちは、この世に生まれいつかは必ず死んでいかなくてはなりません。そうです私がいつも言っているように「人生には限りがある」のです。そしてその限りある人生を「いかに生きいかに死ぬか」が私達人間にだけ与えられた大きな課題なのです。

Xー118 空海の名言P

「物の興廃は必ず人に由る 人の昇沈は定めて道に在り」(『性霊集』)

 この言葉は、物事が盛んになるのも廃(すた)れるのもそれはその人による。人の浮き沈みも同じであり、人としての正しい生き方をいかに実践して行くかにかかっている。という意味でしょうか。
 私達は、家庭、学校、職場、サークル、地域等々で生活していますが、その生活はどれをとっても自分一人で生きているのではありません。人と人との繋がり、関係性で生活しています。その繋がりと関係性は、独りよがりの生き方では上手くいきません。正に「物事が盛んになるのも廃れるのも」その人の生き方によります。人の昇沈にも同じことが言えるのではないでしょうか。

Xー119 空海の名言Q

「釈教は一言之を蔽(おお)えば唯二利(ただにり)に在り」(『御請来目録』)

 お大師様は、「お釈迦様の教えを一言で言えば、自利と利他の二つの利に尽きる」と言われました。この教えは、私がこまでも何回か述べてきましたように、私達一人一人が持っている命という時間を、自分のためだけに使うのではなく、自分以外の人のためにも使うことが大切であることを意味しているのです。
 これが人間らしい人間としての生き方、そうですそれが正に菩薩行なのです。

Xー120 空海の名言R

「人生百年に非ざれども万歳(まんさい)の業を積む」(『続遍照発揮性霊集』)

 「百年も生きられないのに、なにを急いで、欲張って楽しみを追い求めるのか」(大栗道榮著・中経の文庫「空海の感動の言葉」より)という意味です。今でこそ平均寿命が80年超、100歳以上の方が7万人を越えましたが、お大師様の時代には考えられなかった時代背景が浮かび上がります。

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