住職法話

住職法話 「いかに生き、いかに死ぬか」

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第98回

(令和元年5月1日)
U.緩和ケア医療に学ぶ生と死

 「平成もアトOO日」というなんとなく哀愁を感じさせる中にありましたが、今日から「令和」となりました。世の中が劇的に変化するわけではありませんが、それでも元号の変化は何かしら時代的変化の感覚を呼び起こします。「平成」の呼び名になれるまでは少し時間がかかりましたが、「令和」も同じことでしょうか。
 さて、前回のこの項では、私の山形県立中央病院時代からの親友・M氏の死について、2回に亘って述べました。今回からは檀家さんの中で印象に残る方の死について考えます。

U-104 印象に残る檀家さんの死 
      @− 〜義母の死に婿の喪主も介護して泣く〜

 A氏の義母・C子さんは、96歳をもって亡くなりました。ご自宅は長年会社経営をしており、良縁あって一人娘の所にA氏が婿養子として入りました。
既にC子さんのご主人は20数年前に亡くなり、A氏は社長として働いています。
 C子さんは、ご主人亡き後も元気に過ごしていましたが、一年前に転倒して大腿骨骨折。以後、次第に痴呆が進行して行く中、胃がん末期の診断を受け入院するも、徘徊などの認知症状が出て「入院は困難」に、加えてC子さんご自身の「家に帰りたい」との強い希望もあって自宅療養になりました。
 ご家族はC子さんの他、A氏夫婦と息子の4人。介護の社会制度を利用しながらA氏夫婦の介護が始まったのです。幸いにしてご自宅に会社が有り、ご夫婦は必要に応じてC子さんの側につくことが出来ました。自宅介護の中心は、やはり実娘であるA氏の妻でしたが、A氏自らベットサイドでの語らい、食事介助などの介護も日常的だったのです。

U-105 印象に残る檀家さんの死 
      @− 〜義母の死に婿の喪主も介護して泣く〜

 息を引き取る最期の状態に気付いたのもA氏でした。住職の私にA氏からの電話は「住職!大変なことになってしまった!婆ちゃんが死んだ…」と。
葬儀では、日頃雄弁なA氏には珍しく、涙ながらの喪主挨拶となりA氏と「婆ちゃん」との限りない一体感を受けたものです。
 男性が介護役を担うことは珍しいことではなくなっていると思いますが、お婿さんの立場の人が日常的に介護するというのは比較的珍しいことではないでしょうか。涙して見送ることが出来たのは、ご家族の深い絆を感じると同時に、C子さんの在宅による幸せの死を想い知ったのでした。

U-106 印象に残る檀家さんの死 
      @− 〜義母の死に婿の喪主も介護して泣く〜

 後日A氏は「自分の実親が死んだときは、涙一つ出なかったが、今回は…。介護を通して情が移ったんだと思う」と。このA氏の言葉に、在宅死の幸せが潜んでいるような気がしてなりません。住み慣れたわが家は、物理的な「家」「自宅」だけではなく、家族の愛に包まれ生活し、そして死を迎えることが出来ることに最大の意味合いがあるのではないでしょうか。

U-107 印象に残る檀家さんの死 
      A− 〜義母の死に喪主も介護して泣く〜

 前項のA氏と同じような事例ですが、70歳のDさん宅に、その妻Eさんの90歳になる母親Fさんが5年に亘って同居していました。Fさんの夫は1年前に他界したのですが、Fさんは脳卒中と認知症を患い、高齢の夫が介護できないということで、娘が嫁いだDさん宅に同居していたのです。心優しいDさんは、快く同居を引き受け、介護に当たるEさんのお手伝いを日常に亘って続けてきたのです。Fさんの葬儀に当たって喪主はDさんが務め、喪主挨拶をしたのですが、前項のA氏と同じく、涙ポロポロの挨拶となりました。A氏の場合はお婿さんだったのですが、D氏は晩年になって同居された経緯で趣きが少し異なりますが、自身の実母同様の感情を持ち合わせていました。ここにも自宅(正確には自宅同様の住まい)でなくなった幸せを思わずにはおれません。

U-108 印象に残る檀家さんの死 
      A− 〜義母の死に喪主も介護して泣く〜

 これまでも何回か自宅で死を迎える意義について述べ、入院中の患者さんの多くは「自宅に帰りたい」「自宅で死にたい」と希望するものの、「家族に迷惑を掛ける」などの理由からなかなか難しいのが現実です。このD氏宅と前項のA氏宅にとっても介護は毎日しかも24時間ですので、その現実は生やさしいものではなかったと思うのです。しかしお二人とも葬儀とその後の四十九日法要時の「お斎」(おとき)の席での挨拶には、出来るだけのことは精一杯やり切ったというある種の安堵感と満足感が漂っていたのは私の勘違いだったのでしょうか……。

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