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第97回

(平成31年4月1日)
T.日本社会の現状 -福祉的社会学的考察-

 この項の「T 日本社会の現状」から、「X 仏教に見る祈りと教え」まで、先月で19巡しました。今月から又、「T 日本社会の現状」に戻って現代社会の私達の生活」を見ていきたいと思います。前回のこの項では最近取り上げられているいくつかの老人問題を紹介し、考えてみました。今回は厳しい経済生活の最後のセーフティネットと言われる生活保護、特に2017年1月に問題が発覚して大問題となった「小田原市のジャンパー事件」とその後、そして生活保護費削減とその影響等について2回に亘って述べます。

T-101 生活保護行政に問題 @ 小田原市のジャンパー事件

出雲大社

 2017年1月、神奈川県小田原市生活支援課職員が「保護なめんな」などとプリントしたジャンパーを自費で作製し、保護受給世帯の訪問時などに10年もの間着用していたという事態が発覚しました。ジャンパーの胸には漢字の「悪」を描いたエンブレムがあり、ローマ字で「HOGO NAMENNA」(保護なめんな)と記され、背中には「不正を発見した場合は、追及し正しく指導する」「不正受給するような人はクズ」という趣旨の英語の文章が書かれていたというものです。
 当時のマスコミで大々的に報道されましたのでご記憶の方も沢山おられると思います。その後、市は「不適切だった」として着用を禁止しました。
 同課の説明によると、2007年に窓口で職員が生活保護を打ち切られた男に切りつけられるなどした事件が発生。業務量も多く、職員のやる気が低下していたことから、連帯感を高めようと当時の職員らが製作し着用し始めたということです。市長は「理由はどうあれ、配慮を欠いた不適切な表現。市民に誤解を与えることのないよう指導を徹底したい」と表明したのでした。

T-102 生活保護行政に問題 A 小田原市のジャンパー事件

〜 今野晴貴氏の指摘 〜

 この様な事態を受けて、労働・福祉運動家で社会学者でもあるNPO法人POSSE代表の今野晴貴氏は、行政の違法行為・人権侵害について次の3点を上げて問題視しています。

  • @ 水際作戦
  • A 命を脅かすパワーハラスメント
  • B 貧困ビジネスとの連携

T-103 生活保護行政に問題 B 小田原市のジャンパー事件

〜 今野晴貴氏の指摘 〜

 今野晴貴氏が指摘する第1点は

  • @ 生活保護受給の相談(申請)窓口に於ける水際作戦が問題と指摘しています。具体的には、相談に来た住民に対して「若いから働ける」「家族に養って貰え」「住所がないと受けられない」等の対応により、行政が窓口で追い返したり、申請書を渡さないことがあることを上げています。
    私の医療福祉相談員の現職時代の経験でも、県内の自治体の一部になかなか保護申請を受理しない役所がありました。患者さんや家族に生活保護の申請を勧める時、申請先がその自治体の場合は、申請に行く前に私の方からその役所の担当者に「○○さんが相談・申請に行きますのでどうぞ宜しく」との電話を入れたものです。この電話で明らかに対応の違いがあったことを思いおこします。

T-104 生活保護行政に問題 C 小田原市のジャンパー事件

〜 今野晴貴氏の指摘 〜

 今野晴貴氏が指摘する第2と3点は

  • A 命を脅かすパワーハラスメント
    行政が受給者の生活に介入する中で「保護の打ち切り」をちらつかせ、圧迫する行為
  • B 貧困ビジネスとの連携
    住居の無い申請者に保護受給者を対象にした民間の施設を念頭に「施設に入らなければ申請させない」と誘導。受給者は結果として劣悪環境に置かれた上、保護費の殆どを施設側に徴収されることに。民間業者は生活保護費という言わば取りっぱぐれのない受給者を囲い込むことに。対して自治体は公的宿泊施設を用意する為のコスト削減に加え、施設一ヶ所に集めて管理してくれれば役所の人件費削減にもなると言う側面も抱えているのではと指摘。

T-105 生活保護行政に問題 D 小田原市のジャンパー事件

〜 その後の小田原市の生活保護行政 〜

 一連の問題発覚後、市長が[組織的な問題]として、有識者、市職員に加え、かつて生活保護を利用したことがある人を加えた「生活保護行政のあり方検討会」を設置。生活保護「受給者」から「利用者」として、生活保護は市民の権利と位置付けた上で、次のように改革することに。

  • @ 職員数を増やして一人当たりの世帯担当数を減らす
  • A 保護申請から決定までの日数短縮
  • B 利用者目線に沿った「生活保護のしおり」の見直し
  • C 自立支援への強い取り組み

 この様にその後の小田原市は、保護行政の改善にスピード感を持って取り組んでいると伝えられています。

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