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住職法話 「いかに生き、いかに死ぬか」

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第87回

(平成30年6月1日)
T.日本社会の現状 -福祉的社会学的考察-

 さて、この項の「T 日本社会の現状」から、「 X 仏教に見る祈りと教え」まで、先月で17巡しました。今月から又、「T 日本社会の現状」に戻って現代社会の私達の生活を見ていきたいと思います。前回のこの項では日本経済新聞に掲載され、誰でも陥りやすい経済生活の落とし穴について述べた「中高年、収入急減の『5つの崖』」の記事を紹介しながら老後の生活問題を考えました。今回はその他に、最近取り上げられているいくつかの老人問題を紹介し、考えてみたいと思います。   

T-90 増える中高年の自己破産

大正ロマン溢れる山形・銀山温泉
 最高裁司法統計によると、2016(平成28)年の個人の自己破産件数が13年ぶりに増加し、64,638件になりました。その内容で目を引くのが、中高年に自己破産が増えていることです。一昔は若い世代に多く見られた傾向でしたが、状況が変わってきているのです。この傾向の要因は、これまで述べてきた「五つの崖」の他、次のような原因があるのではないかと考えられています。

@ 銀行のカードローン
政府の低金利策で一般的貸出金で利ざやを得ることが困難になったと言われる銀行が、高い利ざやのカードローンで無担保・過剰融資を行 い、結果として自己破産件数を増やしているのではないか。
A 住宅ローン返済困難
若い時代に組んだ長期に亘るローンの返済が、病気、倒産、リストラ等々で返済困難に。 買い求めた家を売却してもローンの未払い金が残ってしまう事態もあるようです。
前回T−84から述べてきた「五つの崖」をはじめ、十分に注意したいものです。

T-91 高齢単身女性も生活不安

 「わくわくシニアシングルス」の50歳以上のシングル女性に対する調査によりますと、「現在の暮らし向きが大変苦しい」が18.7%、「やや苦しい」37.2%で合計約56%に上るということです。
 かつて「老後問題は女性問題」と言われた時代があります。つまり平均寿命の差から「残されるのは女性」という実態を反映した問題提起でした。このような単純な問題提起は最近になって余り目につかなくなりましたが、問題の本質は今でも変わらないのではないでしょうか。「老後問題」の中身はいろいろありますが、生活の基本である経済は「50歳以上のシングル女性」にとって厳しい現実が示されたと言えるのではないでしょうか。

T-92 「幸福老人と不幸老人」(「週刊ポスト」誌)@

「週刊ポスト」2017年12月15日号に「人生100年時代の生き方指標」の副題の下、「幸福老人と不幸老人、その『境界線』がわかった」との大々的記事が掲載されました。それによると

◆ 「幸せはカネで買えるか」と題して

 行動経済学による「人は何に幸福度を感じるか」が研究されており、2015年のノーベル経済学賞を受賞したアンガス・ディートン氏等のプリンストン大学研究チームの「幸福はカネで買えるのか」の研究を紹介。それによると「収入が増えるにしたがって生活の満足度は上昇するが、上昇効果は米国の平均年収に近い7万5000ドルで頭打ちになる」という結果を発表し、「低い収入には感情的苦痛を伴うが、高収入で経済的には満足できても、幸福は買えない」と結論づけたことを紹介しています。
 大阪大学の調査では、世帯所得150万円まで幸福度が低く、そこから所得が上がるにつれて上昇。しかし500万円を境に上昇曲線は頭打ちになり、ほぼ横ばいに。更に1500万円を超えると逆に幸福度は下がる結果に。調査担当者は「貧しい人にとってお金が重要なのは確かですが、物質的な満足感は一定の生活水準に達してしまえば、それ以上大きく上がらない。もっと稼ごうとして無理して働いて健康を損なったり、家庭を顧みなくなるなど」の問題が出て来ることを紹介しています。
 ところで、2017年6月にこのホームページで発表した「W 日々の生活の質をいかに高めるか」の中で、「世界で一番貧しい大統領」と言われたウルグアイ前大統領のホセ・ムヒカ氏の演説を紹介しました。その中で氏は「貧乏とは少ししか持っていないことではなく、無限に欲があり、いくらあっても満足しないことです」と述べました。この考え方と生き方は、「幸せはカネで買えるか」の調査結果と微妙にリンクしているのではないかと思うのです。そうです欲が欲を呼び「もっと稼ごうとして無理して働いて健康を損なったり……」という状態を生み出してしまうのです。改めて仏教の「足るを知る」の大切さを思い知るものです。

T-93 「幸福老人と不幸老人」(「週刊ポスト」誌)A

◆ 「過去の肩書より現在の存在感」と題して

 生活水準が上がれば幸福度が上がるが、それは一時的で慣れてしまえば元に戻ってしまう。それに対して友人とのお喋りや趣味などの精神的な幸福度は、上がったまま長期間続く
 近年の独居高齢者の傾向として、大家族で生活して気を遣うより、住み慣れた場所で自分のペースで生活できる方が良いと考えることが多くなっている。子供から「一緒に住もう」と言われて断るケースも少なくない
 高齢者の一人暮らしには、地域のネットワークに仲が良い友人が2〜3人いることが重要
以上のように、精神的幸福度を支える環境作りが大切との指摘です。

T-94 「幸福老人と不幸老人」(「週刊ポスト」誌)B

◆ 「孫より友人、友人より“彼女”」と題して

 60〜70代女性の場合、「孫の面倒を見ているとき」に生きがいを感じる割合が非常に高いが、同世代の男性は、「孫の世話」より、「趣味に熱中している時」や「友人との食事や雑談」に生きがいを見いだしている人の割合が遙かに高いこと(内閣府の幸福度調査より)を紹介しています。
 一人暮らしのシニア男性の場合は、友人の存在以上に親密な女性の存在が幸福度を分けるとして、「ガールフレンドが居ない場合の幸福度が32.0%」なのに対して「いる場合は58.3%」と紹介。
 「週刊ポスト」誌は、概ね以上の「幸福老人と不幸老人」の「境界線」を紹介した上で、仕事と幸福度の関係を研究している東洋大学の久米功一・准教授の考えを次のように紹介しています。
 「幸福度を高めるには、現役時代から夢中になれる趣味を持ち、リタイヤしたら交友が途切れる会社の同僚ではない、学生時代の友人や趣味の仲間をつくって人間関係を広げておくのが大切。勿論、リタイアしてからでも遅くはありません」と。

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