住職法話

住職法話 「いかに生き、いかに死ぬか」

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第79回

(平成29年10月1日)
V.有限の人生そして「死」を意識して

 この項については4回に亘って「尊厳死」、「自然死」、「安楽死」、「延命治療」等について述べました。今回はその5回目として尊厳死等について長い間活動し、多くの発信を続けている「日本尊厳死協会」を紹介すると共にその考え方などについて述べます。(協会のホームページをよりどころに紹介しますので、詳細は協会ホームページをご覧下さい)

V−79.「日本尊厳死協会」とその活動 @
〜協会の歴史について〜

協会のホームページによりますと、
 日本尊厳死協会は1976年1月に設立され、その目的を「自分の病気が治る見込みがなく死期が迫ってきたときに、延命治療を断るという死のありかたを選ぶ権利を持ち、それを社会に認めてもらうことが目的です」とあります。
 さらに現状と今後について「設立から40年近くが経ち、終末期に対する社会の認識も変わりつつあり、延命治療を望まない人が多数になっています。
 今後の目的は、そういった人たちにリビング・ウイルの提示という方法をお伝えすること」にあるとしています。
 尚、協会は1976年当初、安楽死協会として設立しましたが、1983年「日本尊厳死協会」と会名を変更、現在11万3千人の会員ということです。

V−80.「日本尊厳死協会」とその活動 A
〜「リビング・ウイル」(リビング・ウイル・Living Will)〜

 前項に「リビング・ウイルの提示」が今後の目的とありました。協会の「リビング・ウイル」とはどういう内容なのでしょうか。やはり協会のホームページから紹介します。
 協会は「治る見込みのない病態に陥り、死期が迫ったときに延命治療を断る」ために「『リビング・ウイル』(終末期医療における事前指示書)を登録管理」しています。この文書内容に署名した「宣言書を医師に提示すれば、多くの場合、延命治療を施されないことになります」とあります。その宣言書の内容は次の通りです。

不治かつ末期になった場合、無意味な延命措置を拒否する
苦痛を和らげる措置は最大限に実施してほしい
回復不能な遷延性意識障害(持続的植物状態)に陥った場合は生命維持措置をとりやめてほしい
という内容です。

V−81.「日本尊厳死協会」とその活動 B
〜尊厳死の宣言書〜

 協会員の具体的な対応として以下の「日本尊厳死協会の尊厳死の宣言書」で表明しています(協会ホームページ)
 「私は、私の傷病が不治であり、かつ死が迫っていたり、生命維持措置無しでは生存できない状態に陥った場合に備えて、私の家族、縁者ならびに私の医療に携わっている方々に次の要望を宣言いたします。
 この宣言書は、私の精神が健全な状態にある時に書いたものであります。したがって、私の精神が健全な状態にある時に私自身が破棄するか、または撤回する旨の文書を作成しない限り有効であります。
 私の傷病が、現代の医学では不治の状態であり、既に死が迫っていると診断された場合には、ただ単に死期を引き延ばすためだけの延命措置はお断りいたします。
 ただしこの場合、私の苦痛を和らげるためには、麻薬などの適切な使用により十分な緩和医療を行ってください。私が回復不能な遷延性意識障害(持続的植物状態)に陥った時は生命維持措置を取りやめてください。
 以上、私の宣言による要望を忠実に果たしてくださった方々に深く感謝申し上げるとともに、その方々が私の要望に従ってくださった行為一切の責任は私自身にあることを附記いたします。

V−82.「日本尊厳死協会」とその活動 C
〜尊厳死と協会会員数(協会ホームページ)〜

 尊厳死とは「傷病により『不治かつ末期』になったときに、自分の意思で、死にゆく過程を引き延ばすだけに過ぎない延命措置をやめてもらい、人間としての尊厳を保ちながら死を迎えることです。」とあります。
 日本尊厳死協会の会員数変遷は、「設立26年目の02年末には10万人を超え、現在では11万人を超える団体になっております。会員の約80%が65歳以上ですが、自然な死を求める考えに共鳴して、多くの若い人たちも会員になっています。」と発表しています。

V−83.「日本尊厳死協会」とその活動 D
〜安楽死とは違います(協会ホームページ)〜

 「安楽死」と「尊厳死」を混同している場合がありますが、明らかに異なります。この違いをしっかり把握しておく必要がありますので、やはり協会のホームページから紹介します。
 「死期が迫っている患者に耐え難い肉体的苦痛があり、患者が「早く逝かせてほしい」との意思を持っていることが明らかな場合でも、医師が積極的な医療行為で患者を死なせることを安楽死と呼びます。延命措置を行わないこととは、明らかに異なりますし、日本では患者を安楽死させた事件では、いずれも医師の有罪判決が確定しています。欧米などでは、この安楽死を合法的に認めている国・州がありますが、日本尊厳死協会は安楽死を支持していません。」。「尊厳死」の内容については前項で述べたとおりです。

V−84.「日本尊厳死協会」とその活動 E
〜リビング・ウイル(LW)が実際の医療で生かされたか否かの 〜2015年「ご遺族アンケート」結果(協会ホームページ)〜

 851人からの回答があり、亡くなった場所は、病院63%、自宅18%、高齢者施設14%で、692人(81%)が医療関係者に伝えたとのことです。その上で、「LWが最期の医療に生かされたと思いますか」との問いに対して、「十分に生かされた」が54%、「どちらかと言えば生かされた」が36%と答え、「計90%のご遺族がLWに意義と効果を認めた」と伝えています。

V−85.意識を下げる「鎮静」

 これまで「尊厳死」「安楽死」等について述べてきました。この項の最後に尊厳死の考えに含まれるかも知れませんが、「鎮静」について取り上げます。
 これまで長く述べてきた「緩和ケア医療」は、あくまでも患者さん本人の意識を保ったまま痛み等の苦痛を緩和することですが、一部の症状(患者さん)に、医療用麻薬等がなかなか効かないことがあります。その結果患者さんは耐えがたい苦痛を受けることになります。この様な状態の患者さんに「鎮静」が選択される場合があるのです。具体的には鎮静薬や睡眠薬等を使って患者さんの意識を意図的に下げることです。
 この「鎮静」を選択した場合、薬の量の調整によって日中はウトウト状態、夜間は深い睡眠状態に調整出来る場合もありますが、病状が進みますと意識低下によって家族との会話が出来ないという事態になります。
 この「鎮静」、医師が勝手にこの方法をとるわけではありません。第一に患者さん自身の考え、その上でご家族の意向が確認されます。したがって先述した「延命治療」についての考え方や、「日本尊厳死協会の尊厳死の宣言書」にもこの「鎮静」についての考え方について家族間で相談・協議し記載することが必要ではないかと思われます。

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