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第74回

(平成29年5月1日)
V.有限の人生そして「死」を意識して

 この項については3回に亘って「尊厳死」、「自然死」、「安楽死」そして「延命治療」等について述べました。今回はその4回目として「尊厳死」と「安楽死」の法制化の動きについて述べます。
 ところでこの課題について、文藝春秋(2016年12月号)で脚本家の橋田壽賀子氏が「夫との死別から27年、91歳脚本家の問題提起『私は安楽死で逝きたい』」との考えを発表し、「日本も安楽死を認める法律を早く整備すべきです」と述べました。この提起に対して同誌の2017年3月号で各界からの様々な反響が掲載されました。又、週刊ポスト2017年2月17日号でも「安楽死のすべて」と題して特集が組まれました。「尊厳死」、「安楽死」について日本の法整備をはじめとした現状、世界の情勢、著名人の考え方(賛成・反対)などが掲載され、大きな問題提起となりつつあるように思われます。

V−74.「尊厳死」と「安楽死」


マッターホルンを望む

尊厳死と安楽死については次のように整理されます。
@ 尊厳死
  回復見込みのない末期状態になった時、自らの意志で延命治療をしないこと。あるいは開  始した延命治療を中止し、自身が考える人間としての尊厳を保ちながら死を迎えること。

A 「安楽死」
  患者の激しい肉体的・精神的苦痛を解放するため、薬物などで死に至らしめること。

 日本には安楽死は勿論、尊厳死についての法律はありません。先の事例の通り、患者さんや家族の要請を受けて延命治療を中止した医師は「殺人罪」に問われる可能性があります。したがって医療現場では患者さんや家族が尊厳死を望んでも延命措置を続ける傾向が強いと言われています。こうした事態を解消するため、尊厳死を法制化する動きが日本においても出ているわけです。

V−75.「尊厳死」をめぐる法制化の動き


朝焼けのマッターホルン

 治療を中止した医師の法的責任を問わないことを主目的として、患者さん自身の自己決定権を尊重しようとするものです。この法制化の動きは次の通りです。

2003年12月
日本尊厳死協会が尊厳死法の草案「尊厳死に関する法律要綱案」を作成して国会議員に協力要請
2005年 4月
超党派の国会議員で「尊厳死法制化を考える議員連盟」を結成
2007年 6月
議員連盟「臨死状態における延命措置の中止等に関する法律要綱(案)」を発表
2011年12月
議員連盟(加盟議員91人)「終末期の医療における患者の意志の尊重に関する法律案(仮称)骨子」を発表
2012年 3月
議員連盟が「終末期の医療における患者の意志の尊重に関する法律案(仮称)」を発表


 超党派で作る「尊厳死法制化を考える議員連盟」がまとめた法案は、15歳以上の患者を対象に、書面などで意思表示(いつでも撤回可能)した場合、2人以上の医師が回復の見込みのない終末期との判定で一致すれば、延命治療を始めずに尊厳死を認める内容。医師は法的にも行政的にも責任を問われないことになります。又、治療中の患者の延命措置を中止することも認める第2案もまとめていると言われます。
 一方で、尊厳死を法律で認めることについては、個人の死に国が介入することへの基本的な疑問に加え、国会議員間でも賛否両論があると言われています。
 その他、日本弁護士連合会は「国民的議論が十分尽くされていない」等として、反対を表明。障害者や難病患者の団体も法制化に反対しています。
 議員連盟としては、早い機会に法案の国会提出を予定していると言われていますが、この様な情勢から法案の提出には至っていません。

V−76.法制化の内容と検討事項 @
〜延命措置についての「自己決定権」に関する法律上の根拠〜


マッターホルンの全貌

 憲法第13条に「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする」とあります。この「幸福追求に対する国民の権利」つまり「幸福追求権」の内容の一つとして、「自己決定権」が含まれると言われています。そしてその「自己決定権」には、「延命治療拒否の権利」つまり「死ぬ権利」も含まれるという考え方です。

V−77.法制化の内容と検討事項 A
〜各種内容の定義〜


ドイツ・ノイシュバンシュタイン城

 論議を深める中で、関係する各種の言葉や内容を定義し確認する必要があります。確認しないままの論議では、統一した議論は出来ませんし、法制化は不可能です。特に、次の4項目の定義は最も重要と言われています。

@
延命措置の内容として具体的に何を意味するのか
A
「終末期」とはどの段階を意味するのか。余命がどの程度であれば「死期が間近」となるのか
B
「家族」の範囲はどこまでなのか
C
対象の適用年齢をどうするか、遺言可能年齢や臓器提供可能年齢などとの関係をどう考えるか。加えて、根本問題としてそもそも法律で定める事なのか等々の問題があると言われています。
  

V−78.諸外国の動き

外国での尊厳死と安楽死についての動きは次の通りです。

@ 米国
  医師による積極的安楽死を認めているのはカリフォルニア州、オレゴン州、ワシントン
 州、バーモント州、モンタナ州 ニューメキシコ州 コロラド州の7州

A オランダ
  18歳未満を除いて。安楽死を認めている

B ベルギー
  オランダと同様だったが、2014年に年齢制限無しの安楽死を認めた法律に

C フランス
  2005年尊厳死に限定して法制化

D ルクセンブルグ
  2009年に法制化、オランダと同じ

E スイス
  自殺幇助に関する罰則規定無しのため、事実上安楽死を容認。外国人も可能であるため
 「安楽死ツアー」が問題に

F カナダ
  2016年6月安楽死を法制化

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