第70回
(平成29年1月1日)
1 マンデラ氏の経歴
南アフリカ初の黒人大統領となったネルソン・マンデラ氏は2013年12月5日、南アの首都・ヨハネスブルグの自宅で95歳で亡くなりました。
その後、追悼式が開かれ、諸外国から多くの首脳が参列しました。
マンデラ氏は、人種隔離政策のアパルトヘイト反対運動を展開、「国家反逆罪」で1962年に逮捕され、27年間に及ぶ獄中生活の後、1990年に釈放されました。その後もアパルトヘイト撤廃に尽力し、1993年にノーベル平和賞を受賞。翌年の1994年、南アフリカ大統領に就任、民族和解・協調を呼びかけアパルトヘイト体制下での白人・黒人との対立解消、経済不況からの回復に努めたのです。
2 マンデラ氏の名言 @
元大統領のマンデラ氏は演説が上手く名言も数多いことで知られていますが、その中から氏の真髄の名言を上げてみます。
「生まれたときから、肌の色や育ち、宗教で他人を憎む人などいない。人は憎むことを学ぶのだ。もし憎しみを学べるのなら、愛を教えることもできる。
愛は、憎しみに比べ、より自然に人間の心にとどく」
昨年の選挙中、過激かつ差別発言で世界を驚かせたどこかの大統領に聞かせたいと思うのですが……。
2 マンデラ氏の名言 A
「奴隷制やアパルトヘイトと同様に、貧困は自然のものではなく、人間から発生したもの。よって貧困は人類の手で克服し、
根絶できるものだ」。
現代社会の貧困は、「本人の努力が足りないから」「学歴が‥‥」等々、本人の言わば自己責任に原因がある見方も有りますが、近年は「貧困を生み出す社会的構造」が問題視されることが多くなったように思います。「世界の上位1%が残りの99%より多くの資産を持つ」、「かつての日本は『一億総中流社会』と言われたのに」、「日本の子供の相対的貧困率、先進20カ国のうち、4番目の高さに」、「低い進学率、低所得家庭に深刻」、「固定化する貧困」、「非正規雇用者4割に」等々。マンデラ氏の言葉を改めて確認したいものです。
2 マンデラ氏の名言 B
「自由や正義への我々の闘争は、人々の力を合わせて行うものだ。そこに生きる全ての人々のために、より良い世界を作り
出すのはあなた自身だ」
2015年12月に紹介した、シールズ関西の大澤茉実(おおさわまみ)さんの「安全保障関連法に反対する学者の会」のシンポジウムでの発言「空気を読んでいては、いつまでも空気は変わらないんです」 との訴えに、相通ずるものがあるのではないでしょうか。「より良い世界を作り出すのは」私たち自身、一人ひとりなのです。
2 マンデラ氏の名言 C
「教育とは、世界を変えるために用いることができる、最も強力な武器である」
この言葉についても2015年10月に紹介したマララ・ユスフザイさんの「平和賞受賞演説」(教育の大切さ、権利、保障)にも通ずる内容です。
3 マンデラ氏大統領退任後の南アフリカ @
現在の南アは、人種差別はなくなったものの貧富の差が大きく殺人事件などの事件も多発しているようです。経済的に豊なのは相変わらず白人に多いのが現状と言われています。
3 マンデラ氏大統領退任後の南アフリカ A
人種隔離政策のアパルトヘイト反対運動展開などで世界に認められたマンデラ氏でしたが、大統領としての全体的国づくりには多くの課題を残してしまったようです。国民の多くの期待を受け、ノーベル平和賞まで受賞したのでしたが‥。
昨年(2016)8月に行われた地方選挙で、マンデラ氏の流れを汲む与党アフリカ民族会議が第一党の地位を確保したものの、多くの地方で敗北してしまいました。黒人解放に尽くした政党より経済状況を反映した結果とも言われているようです。