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住職法話 「いかに生き、いかに死ぬか」

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第65回

(平成28年8月1日)
W.日々の生活の質をいかに高めるか

 前回のこの項では、2015年3月25日に行われた東大教養学部学位記伝達式での学部長式辞を紹介しましたが、今回は同年4月4日信州大学入学式での学長式辞を紹介します。前回も述べましたが、二人の式辞は、若い学生もしくは新社会人だけではなく一般の多くの人々にとっても生き方を考える上で大変参考になる内容です。改めてその内容と教えを考えてみたいと思います。

W−69 山沢清人信州大学長の式辞 @

 山沢学長は2015年4月、入学式の式辞の最初に「新入生の皆様は、本日、大学受験から解き放たれたことになりましたが、もう勉強はしなくて良いなどとは考えていませんよね。」と指摘した後、「今までは、皆様は正解のある問題を解くことに終始していました。知識の量を試されていました。世の中では、正解のない問題を解かなければなりません。誰も考えたことのないことを考えるという、知識の質を問われることになります。」として知識の量から質へ転換を訴えました。
 さらに大学院生に対し「日本が今後とも活力ある社会を維持し、世界へ積極的に貢献していくためには、科学、技術、文化のいずれの分野でも独創性や個性を発揮することが重要となります。横並びの発想では問題を解決できません。」と続けました。

W−70 山沢清人信州大学長の式辞 A

 「横並びの発想」を越えるために、自身の個性を磨くことについて「個性を発揮するとは、なにか特別なことをするのではなく、問題や課題に対して、常に『自分で考えること』を習慣づける、決して『考えること』から逃げないことです。自分で考えると他人と違う考えになることが多くなり、個性が出てきます、豊かで創造的な発想となります。」と説きました。そして「創造性を育てるうえで、特に、心がけなければならないことは、時間的、心理的な「ゆとり」を持つこと、ものごとにとらわれ過ぎないこと、豊か過ぎないこと、飽食でないことなどが挙げられます。」と述べました。

W−71 山沢清人信州大学長の式辞 B

 山沢学長は特に時間の使い方、子供の頃の時間の速度感覚と大人の感覚が異なることについて、脳科学者・ディヴィッド・イーグルマンの言葉「記憶が詳細なほど、その瞬間は長く感じられる。しかし、周りの世界が見慣れたものになってくると、脳が取り込む情報量は少なくて済み、時間が速く過ぎ去っていくように感じられる」を紹介して、「自分の時間を有効に使うために、自力で時の流れを遅くする必要があります。」と述べました。

W−72 山沢清人信州大学長の式辞 C


 山沢学長は、「自力で時の流れを遅くする」ための以下の5項目を上げたのです。

  • 1.学び続けること。新しい経験が得られて、時間感覚がゆっくりとなる。
  • 2.新しい場所を訪ねること。定期的に新しい環境に脳をさらすことに。
  • 3.新しい人に会うこと。他人とのコミュニケーションは脳を刺激する。
  • 4.新しいことを始めること。新しい活動への挑戦。
  • 5.感動を多くすること。

W−73 山沢清人信州大学長の式辞 D


 最後に山沢学長は「信州でもモノやサービスが溢れ始めました。その代表例は、携帯電話です。アニメやゲームなどいくらでも無為に時間を潰せる機会が増えています。スマホ依存症は知性、個性、独創性にとって毒以外の何物でもありません。スマホの『見慣れた世界』にいると、脳の取り込み情報は低下し、時間が速く過ぎ去ってしまいます。」と述べ、「『スマホやめますか、それとも信大生やめますか』スイッチを切って、本を読みましょう。友達と話をしましょう。そして、自分で考えることを習慣づけましょう。自分の持つ知識を総動員して、ものごとを根本から考え、全力で行動することが、独創性豊かな信大生を育てます。」と説きました。

W−74 山沢清人信州大学長の式辞に学ぶ


 日本人はとかく横並びに安心感を持つと言われ、集団から異質とならないように努めてしまう傾向があります。しかし山沢学長は「知識の量から質」への転換の必要性を説き、「独創性や個性を発揮する」ことが重要であること。そのためには「常に自分で考える」習慣が必要であること述べました。自分で考えることによって「横並びの発想」から脱却すると同時に、常に新しい刺激に向き合うことによって、時間の感覚が速くなることを防止出来ると述べました。最後にこれを成し遂げるための具体的事例として「スマホやめますか‥‥」と説きました。
 私の日常生活では余り見られませんが、電車や駅の待合室ではスマホに夢中の人が沢山います。スマホしていない人の方が圧倒的に少ない場合もあり、スマホを持たない私にとっては正に驚きです。情報に奴隷化してしまうのではないかと思ってしまいます。一般のマスメディアから流れ出る膨大な情報についても、常に批判的な精神を持って自分で考える習慣は極めて重要です。新しい刺激に積極的に取り組むことは精神的若さにも繋がるのではないでしょうか。

東大・石井学部長の式辞、「必ず一次情報に立ち返って自分の頭と足で検証」と併せて、「自分で考える」ために「スマホやめますか」!?

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