住職法話

住職法話 「いかに生き、いかに死ぬか」

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第53回

(平成27年8月1日)
U. 緩和ケア医療に学ぶ生と死

 前回のこの項では、公益財団法人「日本ホスピス・緩和ケア研究振興財団」の調査(2012年)についてその前半を紹介しましたが、今回はその後半です。

U-54. 日本ホスピス・緩和ケア研究振興財団の調査 E

図1 残された時間をどう過ごしたいか(複数回答)

調査1
◆ 「もしあなたが治る見込みがない病気にかかり、余命が限られているとしたら、残された時間をどのように過ごしたいと思いますか」(複数回答)について

 「家族と過ごす時間を増やしたい」「趣味や好きなことをして過ごしたい」「家族や周りの人に大切なことを伝えておきたい」という3項目で過半数の回答率がありました。

U-55. 日本ホスピス・緩和ケア研究振興財団の調査 F

理想の死に方(性・年齢別)

調査2
◆ 「もし自分で死に方を決められるとしたら、あなたはどちらが理想だと思いますか」(二者択一)について

 「ある日、心臓病などで突然死ぬ」と回答した人が70.9%だったのに対し、「(寝込んでもいいので)病気などで徐々に弱って死ぬ」と回答した人は26.3%にとどまりました。性別では特徴はありませんが、年齢層別でみると、年齢層が高い人で、「ある日、心臓病などで突然死ぬ」と回答した人が多い傾向にあります。過去の調査と比較すると、「ある日、心臓病などで突然死ぬ」と回答した人は73.9%から若干少なくなっているものの、多くの人が「ぽっくり願望」を持っていることに変わりはないようです。年齢層が高い人でこの傾向が強いのは、2008年調査も今回調査も同様でした。

U-56. 日本ホスピス・緩和ケア研究振興財団の調査 G

理想だと思う理由(複数回答)

調査3
◆ 理想の死に方に「ある日、心臓病などで突然死ぬ」を選択した人の理由(複数回答)について。

 回答率が最も高かったのは、「家族に迷惑をかけたくないから」80.9%、次いで「苦しみたくないから」が69.8%となり、この2項目が「ぽっくり願望」の大きな背景にあると言えます。一方、「(寝込んでもいいので)病気などで徐々に弱って死ぬ」ことが理想だと考える人は、「死の心づもりをしたいから」と回答した人が76.6%と、突出しています。ぽっくり死にたいか、あるいは徐々に弱って死に向かうか、どちらが理想かという意識の背景に、死を迎える考え方に大きな違いがある様子がうかがえます。

U-57. 日本ホスピス・緩和ケア研究振興財団の調査 H

調査4
◆ 今回の調査で明らかになったことについて財団は以下のようにまとめています。

1.家族の問題
 がんで余命が1〜2ヶ月に限られているのなら、自宅で最期を過ごしたいと考える人が8割以上を占めましたが、実際には自宅で過ごすのは難しいと考える人が大半でした。男女の差が大きく、「自宅で過ごしたいし、実現可能だと思う」と回答した人は男性に多くいます。家族に気遣いして自宅で過ごせない人が多いという現状から、介護する家族への支援と在宅医療体制の整備が課題です。
2.ホスピス・緩和ケアについて
 「ホスピス・緩和ケア病棟」を知っている人は6割を超え、認知が広がっていると言えますが、在宅ホスピス・緩和ケアを知っている人は、そのうちの35.1%にとどまりました。 最期を自宅で過ごしたいのに実際には難しいと考えている人が大多数を占める現状で、在宅ホスピスの普及、更なる情報発信は不可欠です。
3.死期が近い場合の不安や心配ごと/宗教との関係
 死期が近い場合、若い世代では、「家族や親友と別れなければならないこと」「残された家族が精神的に立ち直れない」といった死別の不安に加え、「自分が死ぬと、どうなるのか、どこへ行くのか」といった死生観に関わる不安も抱えています。また「残された家族が経済的に困るのではないか」という不安は、子育て世代の40代、50代の多くが抱えています。終末期の医療現場では、こうした多様な不安や心配ごとに対処するケアが求められています。
 調査対象者の8割は特定の宗教や宗派の信仰を持っていませんでしたが、死に直面したときに宗教が心の支えになると思うと考える人は半数を超えており、信仰を持たない人であっても宗教の役割を否定しているわけではないことが分かりました。このことから、死に直面した患者への宗教的サポート(スピリチュアルケア)の必要性が示唆されます。また2008年調査と比較すると、宗教が心の支えになると思うと回答した人が大幅に増加しました。調査時期が東日本大震災から半年後だったことが影響している可能性が考えられます。 以上が財団のまとめでした。

U-58. 日本ホスピス・緩和ケア研究振興財団の調査 I

調査5
◆ 財団調査結果について私が想うこと。

 前回(U−50)でも述べましたが、自宅で過ごしたいが実際には困難と考える方が男性に比べ女性に多いのは、男女の介護力、考え方、現実的思考の差なのでしょうか。又、近年在宅ホスピス・緩和ケアについての必要性が叫ばれていますが、その認知が広がっているとは言えない状況下にあり、病院と地域医療の連携についてより一層の努力と広報そしてなによりも在宅医療制度の充実が必要と思われます。このことは、自宅で最期を過ごしたいという大きな希望に応えるためにも絶対に必要なことです。
 但し、団塊の世代が高齢世代(死亡世代)となる時期が近づき、総医療費の高騰が予想される中、病院のベット数や介護施設の定員数の不足が心配されています。財団調査の「在宅死の希望」は、患者家族の純粋な願いです。「在宅死の希望」が多いことをもって、医療と福祉の経費を削減するための在宅死への誘導政策となってはなりません。二つを完全に分離して進めることが大切なのではないでしょうか。
 ところで、欧米では多くの医療施設に宗教家が関わりを持っていると言われております。対して日本社会にあっては、ほんの一部の施設を除いて宗教家との関わりを持っていません。死期を前にしての患者さんに対して「医療者だけでは無理がある」との話をよく耳にするのですが、現実はまだまだというのが実態です。医療施設がもう一つ脱皮する必要があるのは当然ですが、宗教者側にも積極的に医療の現場、死期が近い方々の側に立つ努力が求められます。これは、宗教家の一員(?)としての私自身の課題でもあるのです。

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