住職法話

住職法話 「いかに生き、いかに死ぬか」

トップページ > 住職法話 > 第45回(W. 日々の生活の質をいかに高めるか -生活の質の考察- 44〜49)

45回

(平成26年12月1日)
W.日々の生活の質をいかに高めるか

 前回のこの項では急遽、時局問題の大飯原発運転差止め訴訟に対する判決について述べました。今回はこれまでの流れに戻り「聴くことの大切さ」について一般的な対応のあり方や仏教界(特に私たちの真言宗智山派)の取り組みについて考えます。

W−44 朝日新聞の俳優・吉永小百合インタビュー記事


カナディアンロッキー

 その前に、今年2014年8月6日付、朝日新聞一面に掲載された、俳優・吉永小百合のインタビュー記事を紹介します。
 日本を代表する新聞の第一ページ、しかもそのトップ記事として俳優さんへのインタビュー記事が載ったことはこれまであったのでしょうか。私は初めて目にしました。その内容は8月6日の広島原爆投下69年を記したということもありますが、それにしても驚きの新聞構成でした。
 その内容は、概ね次の通りです。

  • 「どんな状況下でも核兵器にノーを」
  • 「原子力の発電というのは、特に日本ではやめなくてはいけない。これだけ地震の多い国で、まったく安全ではない造り方、管理の仕方をしているわけですから。どうやって廃炉にしていくかを考えないと」
  • 再稼働や輸出の動きに「『さよなら原発』と私は声を出していきたい」

 長年にわたり原爆に関する朗読を重ねてきた吉永小百合、その言葉には他にない重みと説得力を感じました。 

W−45 社会問題特に自死に対する仏教界の対応

 「仏教界は世の中の動きに余りにも鈍感すぎるのでは」といったご批判を頂きます。確かに現代の社会問題に対して言及したり行動することが多いとは言えないと思います。しかしながら近年の仏教界は少しずつ変化しているように思います。最近では福島第一原発による放射能汚染を契機にした原発問題への対応です。(この問題については別の項で触れる機会があると思います)
 年間3万人を越える(2013年?)自死問題についても社会問題の一環として少しずつ取り組みが始まっています。3万人の自死者の背後にはその10〜20倍もの自死未遂者や自死に悩む人々がいると言われていますので当然とも言えるでしょう。以下、仏教界の自死問題についての取り組みの一部を紹介いたします。

W−46 自死に対する真言宗智山派の対応 @

 当圓應寺の宗派は「真言宗智山派」です。先ず、私たちの宗派の取り組みについてです。
◆ 小冊子「自死に向き合う 〜いま、私にできること〜」(浄土真宗本願寺派東京教区教務所が発行したものを基本に、曹洞宗が改訂された内容の一部を取り入れ、真言宗智山派が修正加筆したもの)の発行。2012年9月、宗派の「智山教化センター」から上記冊子が発行され、全寺院に配布されました。この冊子を通して住職をはじめとする僧侶が自死問題に正対することを呼び掛けたのです。その内容の骨子を紹介します。

  1. 発行の目的として、「実際に死んでしまいたいと悩んでいたり、大切な人を自死で亡くしてしまったという苦しみの中にある人たちに対して、私たちはどのように寄り添っていけばよいのでしょうか。『自死に向き合う』と題したこの小冊子は、“いま、私にできること”を考えてもらおうと作成しました」とあります。以下はその内容です。
  2. 「『弱い人』が自死するのではありません」として、「心が弱い人、いのちを粗末にする身勝手な人が自死をするものだと思ってはいないでしょうか?」と注意を促し、「一人で悩みを抱えていると、逃れようのない巨大な悩みに感じられてしまうこともあります。支えることができそうな人が傍らに寄り添い、『生きる支援』をさせていただきたいものです」
  3. 「私たちが心掛けたいこと」@として、
    1. 自死を取り巻く問題に関心を持つこと
    2. 気持ちにより添うこと
    3. 一緒になって考え、共にあゆみましょう
  4. 「私たちが心掛けたいこと」Aとして、
    1. 無条件・無批判に「気持ち」を認めること
    2. 話を逸らさないで「気持ちを」尋ねること
    3. 共感的理解を示し「私の気持ち」を伝えること
    4. 安易に励ましたりせず「一緒に」考えること
    5. 腫れものに触るような態度をとらないこと
    6. 誰かを責めるような発言をしないこと
    7. 無責任に励まさない・比較しないこと
    8. 慰めるよりねぎらうこと
    9. 何か力になれないかたずねる・一人ぼっちじゃないと伝えること
  5. その他、面接・電話・手紙相談で心掛けること。年回忌法要・自宅参り・葬儀時の具体的心掛けについての実践的指導を掲載

W−47 自死に対する真言宗智山派の対応 A


◆ 各種研修会での学習
 宗派では宗内の僧侶・寺庭(住職の妻)向けに様々な研修機会を設けています。智山伝法院開設講座、智山教師総合研修会、教化実践セミナー、教区講習会、教区教化研修会、寺庭研修会等々に於いて自死に関する多くの研修が開かれるようになりました。
尚、智山伝法院開設講座の一部は一般の方々も参加できます。
住所は東京都港区愛宕 電話番号 03-3431-1081です。
インターネットで検索いただきますと講座内容が読み取れます。

W−48 自死に対する仏教界の対応


◆ 真言宗智山派小冊子「自死に向き合う」の基本となった、浄土真宗本願寺派、曹洞宗をはじめ各宗派においても様々な取り組みがされているようです。取り組みは宗派内にとどまらず、一般向けの教化活動にも向けられて来たようです。一方で宗派に属さず自主的な活動を展開している僧侶グループがあります。その一つである「自殺対策に取り組む僧侶の会」の活動を紹介します。
◆ 「自殺対策に取り組む僧侶の会」この会が発行している「安心して悩むことのできる社会を目指します 〜私たちの思い〜」によりますと

  • @ 活動の目的
    「“生死”を問い続ける僧侶として、自死という“いのち”の問題をどうにかしたいと願っています。宗派を越えた東京近郊の僧侶有志が集まって『安心して悩むことのできる社会』を目指します」とあります。
  • A 活動内容
    「ご遺族に穏やかな生活を」「悩みを一人で抱え込まないで」「自死への偏見・誤解をなくしたい」として、
    1. 手紙相談
    2. 自死者追悼法要
    3. 自死遺族の分かち合い
    4. 一般対象に研修会
    5. 立ち上げ支援(僧侶が自死活動を開始する際の支援)
    以上を挙げています。

W−49 改めて「聴くことの大切さ」について

 仏教界の対応を具体的に見ましても、生きることに自信を無くしている人に対する対応の基本は、「良く聴き良く寄り添う」ことです。これは僧侶としての対応ではなく、相談を受ける全ての人びとに共通した基本です。しかしよく考えてみますとこの対応の基本は、私たちの日常生活においても大切なことではないでしょうか。時に、自分の主張(だけ)を強調し聴く耳を持たないような雄弁家に出会うことがありますが、人と人の付き合いは相手の話を良く聴くことから始まるのではないでしょうか。住職としての私もよくよく注意したいものです。

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