住職法話

住職法話 「いかに生き、いかに死ぬか」

トップページ > 住職法話 > 第12回(T.日本社会の現状 -福祉的社会学的考察- 9〜13)

第12回

(平成24年3月1日)
「いかに生きいかに死ぬか」のテーマの下、この項の 「T.日本社会の現状」からはじめ、先月の「X.仏教に見る祈りと教え」で二巡しました。今回から再度、「日本社会の現状」に戻り話を進めて行きます。前回のこの項では、人々の経済的生活の厳しさと格差拡大について述べました。今回はより具体的な切り口で生活実態を見てみたいと思います。

T−9.親の年収が進学率を左右

年収別 高校生の4年制大学進学率
年収200万未満 3割未満
600万〜800万未満 49.5%
800万〜1千万未満 54.8%
1200万以上 62.8%
教育格差

 年収200万円未満の家庭の高校生の4年制大学進学率は3割に満たず、一方で1200万円以上の家庭では倍以上の6割強に(東京大学の大学経営・政策研究センターが調査)。保護者の収入が多くなるほど右肩上がりに大学進学率が高くなることが確認された。「国公立大では所得による差はあまりないが、私立大への進学で大きな差がついた」との報告。
 子の進学率が、親の所得によって左右されるという現実。低所得層の固定化にもつながりかねない社会問題と言えるのではないでしょうか。
この調査を進学先の国公立大と私学別に見ると次の通り報告されています。
 国公立大は年収600万円未満はどの層も10%強、1200万円以上でも12%強と大きな差はない。他方、私大進学の差は顕著で、200万円未満は17.6%、600万円以上800万円未満は36.8%。1200万円以上では50.5%で、200万円未満の2.9倍。

T−10.「努力すれば報われる?」

 09年3月、通信教育最大手・ベネッセコーポレーションによる全国大学生に対する調査発表によりますと79パーセントの学生が「日本は競争激しい」と答え、 52.7%の学生が「努力しても報われない社会」と答えています。…
 調査したベネッセは「努力することへの肯定感の低さが目立つ。次代を担う人材を育てていく上で、大学や社会全体の課題となるだろう」と分析していますが、閉塞感の漂う日本社会の現状を表しているのではないでしょうか。

東京大学東京大学

T−11.日常生活での悩みや不安

平成19年7月内閣府調査によりますと
・日常生活の中で、「悩みや不安を感じているか」を聞いたところ、
「悩みや不安を感じている」と答えた人が69.5%にのぼり、7割近い人が何らかの「悩みや不安」を抱えていることになります。対して「悩みや不安を感じていない」と答えた人は29.6%となっています。
・それでは「 悩みや不安」の内容は何でしょうか
「老後の生活設計について」を挙げた人が53.7%と最も高く、次いで「自分の健康について」(48.3%)、「家族の健康について」(39.8%)「今後の収入や資産の見通しについて」(39.0%)などの順となっています(複数回答,上位4項目)。
「老後の生活設計」には経済的意味合いも含まれることから、今、国会で議論されている年金問題とも大きく関わる事なのではないでしょうか。

総本山智積院・名勝庭園総本山智積院・名勝庭園

T−12.日本人の幸福感

■自分は幸せと感じている人の割合
オーストラリア・パーツにて平成21年度 国民生活選好度調査 内閣府 2010.4.27
「自分は幸せ」と感じている人
30歳代は 61%
 年齢と共に低下し
70歳代以上は 44%

 30代をピークに年を重ねるごとに幸福感が減少しています。70歳以上は44%の方しか「自分は幸せ」と感じていません。若い世代では身体的にも元気であり、「人生はまだまだこれから」という意識にたいして、70歳を越える年代は人生の終わり方や終焉を意識する年代です。この年代こそが「自分は幸せ」と感じることが期待されると思うのですが‥‥。
 現代日本社会の深刻な問題と言わねばなりません。

T−13.小国・ブータンでは

釈迦が悟りを開いたブッダガヤの聖地福島県相馬市で犠牲者に祈りを捧げられる
ブータンワンチュク国王夫妻 2011.11.18
SANKEI PHOTO

 これに対して、2011年11月来日されたブータンワンチュク国王夫妻の国は、人口70万人という小国(九州とほぼ同じ面積)ですが、この国の政府は物質的総量を表す「国民総生産(GNP)」ではなく、幸福感の総量を表す「国民総幸福(GNH)」の向上に努めているというニュースが、国王の来日を機に大々的に報道されました。それによると90パーセントを超える人々が「自分は幸せ」と感じているということです。昭和時代の後半、日本は「一億総中流意識」と言われました。あの時代はどこにいってしまったのでしょうか。

 次回のこの項(8月に予定しております)では、より深刻な「孤独死」「自死(自殺)」等について述べます。

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