いかに生き、いかに死ぬか

圓應寺 住職法話

住職法話 第166回

仏教に見る祈りと教え
【仏教を今に生かす「いかに生きるか」の考察】

185〜189

「真言宗智山派密厳流遍照講東北・北海道地区山形奉詠山形大会について ①」

 皆様明けましてお目出とうございます。昨年は元旦に発生した大地震をはじめ、能登地方を中心にした北陸地方の二度に亘る自然大災害、当山形県内に於いても庄内と最上地方を中心にした豪雨による大災害か発生し、多くの人的被害と暮らしに大打撃となった一年でした。今年こそは「明けましてお目出とうございます」が一年間響き渡る年になることを心から念じる次第です。

 さて、この項の前回は、仏教の基本的な教え「四法印」について述べました。今回は、この流れを一時中断して、昨年(2024年)6月、真言宗智山派のご詠歌大会が「真言宗智山派密厳流遍照講東北・北海道地区山形奉詠山形大会」と題して、当山形市で盛大に開催されました。この大会に我が圓應寺支部も参加しましたので、その模様と大会に至る流れ(裏事情も含めて)、そしてご詠歌への想いを3回に亘って述べます。

Ⅴ-185 5年ぶりの大会開催 ~新型コロナによる支部崩壊の危機~

会場の「山形テルサ」

 昨年(24年)6月21日、JR山形駅近くの「山形テルサ」を会場に大会が開催されました。この大会は、各年毎に各地区を巡って開催されてきましたが、新型コロナの影響で中断し実に5年ぶりの開催となりました。この間、ご詠歌の支部に当たる各寺院では、ご詠歌の練習にとどまらず寺に参集することも出来ない時期が続きました。当圓應寺にあっても新型コロナ対策として、数ヶ月に亘って参集を控えざるを得なかった時期がありました。数ヶ月~3年ほどの中断は、講員(ご詠歌支部で練習している人)さん個人にとって、せっかく覚えたご詠歌とその作法を忘れてしまうだけでなく、日常にあったご詠歌生活がなくなってしまうことになります。加えて影響著しいのが、講員さんが所属しているご詠歌組織としての各支部(例えば当圓應寺支部)が崩壊の危機に見舞われるという事態です。

Ⅴ-186 5年ぶりの大会開催 ~危機を乗り越えて「山形テルサ」を会場に~

会場入り口

 今回参加された多くの講員と支部も同じ危機を抱えながらそれを乗り越え、参加出来たのではないでしょうか。私どもの圓應寺支部も、このような危機をはらみつつも、何とか持ちこたえてこの大会を迎えることが出来たのでした。

 2023(令和5)年5月8日から新型コロナは5類移行になり、それ以降少しずつ従来の日常生活に戻ることが出来るようになりました。当圓應寺支部にあっても漸く月二回の練習を再開出来るようになりました。久しぶりに顔を合わす講員さん達は「コロナ大丈夫だった?」の連呼。中には「コロナに罹っちゃった」との講員さんも。事実、私も妻も罹患した事実を皆さんに報告したのでした。

Ⅴ-187 5年ぶりの大会開催 ~参加曲を「いろは和讃」に決めて~

練習場の本堂」

 このような経過を経て一昨年の秋季に入って、翌年に迫った大会参加詠歌を「いろは和讃」に決定し、重点的に練習を始めたのです。この詠歌は、数ある密厳流御詠歌の中でも名曲として知られる代表的詠歌です(少なくとも私はそのように思っています)。振り返りますとこのご詠歌は、当支部を起ちあげて間もない、平成19年に初めて大会に参加した「山形・寒河江大会」時に奉詠したご詠歌なのです。今回の大会を遡ること17年です。この私もまだまだ若い60代でした。当然講員さんも同じく歳を重ね、かなりの高年齢になっています。中には当時から在籍している講員さんの一方で、その後に入講した方もおり、「いろは和讃」を初めて練習する方式で取り組みを始めたのでした。

Ⅴ-188 5年ぶりの大会開催 ~当圓應寺支部の歴史と現状を少し~

 圓應寺支部は、私を含めて27人。最高齢は91歳、54歳の方が最も若く、平均年齢は80.2歳という高齢集団(?)です。支部設立当初の平成16年から20年を越えて頑張っている方は13人。正座出来ない人は勿論、室内移動時には他の講員さんに手伝って頂き、「どっこいしょ」と声を出して立ち上がり、腕を支えて貰って歩く方も何人かおりますし、寺まで家族に車で送迎して貰う人も結構な人数です。

Ⅴ-189 5年ぶりの大会開催 ~ご詠歌は認知症防止にも~

本堂に正座、イス・テーブルを並べて(賽銭箱の隣に消毒液)

 別の項でご詠歌と認知症防止の関係について述べますが、ここで少し触れることにします。

 ご承知のようにご詠歌は、旋律にしたがって声を出してお唱えすると同時に、右手に撞木(しゅもく)を持って右膝斜め前に置いた鉦(しょう)を叩きながら左手に持った鈴(れい)を振って鳴らします。当然ですが左右の音は、その曲の決められたリズムによります。このお唱えする声と左右の手の動き(所作の一部です)は、直ぐに出来るものではありませんし、ご詠歌の曲によって異なりますのでなかなか大変です。以前にも別の項で何回か述べましたが、この動作は足も使い、両手も使うエレクトーンの演奏に匹敵するのではないかとの思いです。

 冗談交じりに「ボケ防止のために頑張ろう!」などと発破をかけながらの練習です(「ボケ」はNGですよネ、失礼しました)。このように曲と所作を覚えることが一番の練習ですが、大会参加となると壇上への入場の仕方の練習も必要となります。なにしろ5年ぶりの大会ですので、この練習もなかなか大変なのです。