いかに生き、いかに死ぬか

圓應寺 住職法話

住職法話 第142回

日本社会の現状
【福祉的社会学的考察】155-159

「我が国の健康寿命と平均寿命について」

 皆様、「明けましておめでとうございます。新型コロナ禍で厳しい生活が強いられて三年、今年こそは・・と」(今年の年賀状冒頭のご挨拶から)。さて、このホームページで昨年11月に「全国高校野球選手権大会で栄冠を勝ち取った仙台育英高校、特に監督の感動的優勝インタビュー」の内容を紹介すると共に、私の感想も述べました。その中で監督の「青春ってすごく密なので」についても触れました。私は心密かに昨年の新語・流行語大賞に選ばれることを期待していたのですが、見事「選考委員特別賞」を受賞しました。良かった良かった、おめでとうございます!

 改めて、この項の「Ⅰ 日本社会の現状」から、 「 Ⅴ 仏教に見る祈りと教え」まで、先月で29 巡しました。今月から又、 「Ⅰ 日本社会の現状」に戻って現代社会の私達の生活」を見ていきたいと思います。前回のこの項では、「円の実力低下」について述べました。今回は、我が国の健康寿命と平均寿命について述べます。 

Ⅰ-155 「健康寿命」延びる

箱根

 内閣府が2022年8月1日発表した2022年版「高齢社会白書」によりますと、2019年の男性の健康寿命は72.68歳 女性75.38歳となりました。前回調査の16年時点より男性は0.54歳、女性は0.59歳の延びたことになります。

 平均寿命との差は19年時点で男性8.73歳、女性は12.07歳となり、初公表の10年以降縮小傾向が続いています。「健康寿命」は、介護を受けず自分のことは自分で日常生活が出来る状態です。したがって平均寿命と健康寿命の差が短くなることが求められています。その数値を見ますと男性は2013年9.02歳、16年8.84歳、19年8.73歳。女性は、13年12.40歳、16年12.35歳、19年12.07歳となっており、少しずつではありますが、差が縮小傾向にあります。

 都道府県別で健康寿命が最長だったのは、男性が大分県の73.72歳、女性が三重県の77.58歳。最短は男性が岩手県の71.39歳、女性が京都府の73.68歳。ちなみに私が住む山形県は、男性が72.65歳、女性が75.67歳でした。

Ⅰ-156 平均寿命は

 厚生労働省は2022年7月29日、2021年の平均寿命と平均余命が記載された令和3年簡易生命表を発表しました。それによると、男性の平均寿命は 81.47 年、女性の平均寿命は87.57年となり、前年と比較して男性は 0.09年、女性は0.14 年下回るという異例の数値になりました。このように平均寿命が前年を下回るのは、東日本大震災の影響を受けた2011年以来ですが、厚労省は「悪性新生物、肺炎、交通事故などの死亡率の変化が平均寿命を延ばす方向に働く一本、新型コロナウイルス感染症が平均寿命を縮める方向に働いている」との見解です。

 又、平均寿命(2021年の数値)と健康寿命(3年毎の調査で、数値は2019年)との差は、男8.79年、女12.19年となりました。

 国連人口基金(UNFPA)が発表した2022年版の世界人口白書によりますと、平均寿命が最も長い国は他国と並んで日本が一位で、男性は82歳、女性は88歳。日本のほかオーストラリアなど10の国と地域が1位に並んでいるとのことです。

Ⅰ-157 100歳以上の長寿者 ~初の9万人越え~

 2022年9月16日厚労省の発表によりますと、100歳以上の高齢者は初めて9万人を超え、「老人の日」(注 「敬老の日ではありません」)の15日時点で9万526人(前年比4016人増)となりました。52年連続で過去最多を更新したことになりますが、増加の幅が縮小して、2020年は前年比12・9%増、21年が7・5%増でしたが、22年は4・6%増にとどまりました。女性は8万161人で、全体の約89%を占めました。

 都道府県別にみますと、人口10万人あたりの人数では、島根県が142・41人で10年連続で最多。次いで高知県が136・84人、鳥取が132・60人でした。最も少ないのは33年連続で埼玉の43・62人。次いで愛知県が44.78人となっています。

 「人生100年」と言われる昨今、私たちの周りにもかなりの長寿の方がおられるようになりました。この人数は正にその象徴と言えます。ちなみにこの調査が始まった1963(昭和38)年は153人でした。

Ⅰー158  2021年 出生数 過去最少

 厚労省が2022年6月3日、人口動態統計を発表しました。それによると2021年に生まれた日本人の子供は、81万1604人で、統計開始以来最少になりました。前年より2万9231人、3.5%、減少は6年連続となりました。又、この減少は国の推計より、6年早く81万人台前半となり、少子化が加速度的に進行しているのです。

 一人の女性が生涯に子供の推定人数「合計特殊出生率」は、1.30で前年より0.03%低下、6年連続の低下となりました。この数字は、人口を維持するのに必要な出生率である2.06%を大きく下回り、国が予想していた日本人の人口が一億人を切るのが49年はより早くなるのではないでしょうか。

 ところで昨秋(22年)、「出生数80万人割れか!」のニュースが飛び交いました。国の予測より8年早く22年の出生数が初めて80万人を下回るのではないかとの予想が出回ったのでした。一例を22年11月に出された「日本総研」の見解を見ます。それによると、22年に生まれる子供は、全国でおよそ77万人と、国の統計開始以降、初めて80万人を下回る見通しになったとする推計をまとめたのです。内訳は、前の年から4万人余り、率にして5%程度減少し、国が統計を取り始めた1899年以降で初めて80万人を下回る見通しになったということなのです。大幅な減少について日本総合研究所は、新型コロナの感染が拡大する中、結婚の件数が20年、21年と、減少が続いていることが関係していると分析しています。又、やはりコロナ禍にあって妊娠を避ける意思が働いたとも言えるのではないでしょうか。

 その後の昨年12月20日発表「人口動態統計」(厚労省)によりますと、2022年1~10月に生まれた赤ちゃんは、前年同月比4.8%減となり、年間77万人台の可能性がいよいよ現実味を帯びてきました。これを受けて12月21日付の山形新聞は「少子化は加速度的に進んでいる。未婚・晩婚化など結婚や出産に関する価値観が多様化する中、子どもを産み育てたい人たちはどのような支援を必要としているのか。来春発足のこども家庭庁を司令塔に、現状を見極め迅速に対策を推進すべきだ。岸田文雄首相は、子ども関連予算「倍増」を有言実行しなければならない」と。

Ⅰー159 身近に迫る出生数減少の影響

 死亡者数は戦後最多の143万9809人(その内新型コロナ感染による死者は1万6756人)で、人口の自然減は過去最大の62万8205人となりました。婚姻数も2年連続減少し戦後最少の50万116組でした。このように大きな減少はコロナ禍も影響しているのではないかとみられています。日本人口一億人切れはより速く現実のものとなっているのです。若い世代の減少は、年金制度そのものを揺るがす大変な影響を持っており、国民全般に関わる大問題なのです。

 さて、このような少子化は、保育現場に大きな影響をもたらしているとして、22年6月4日付朝日新聞は「少子化 保育現場に危機  定員割れ 収入減に悩む施設も」と題して、次のような内容を伝えました。「待機児童対策が急務だった保育の現場はいま、少子化の加速で存続か消滅かの岐路に立たされている」と。

 ところで、このような少子化と人口減少を受け、私の身近なところにも影響が出てしまいました。山形市を中心に学校給食を中心にパンの製造販売を70年に亘って続けてきた、会社がこの昨年春をもって自主廃業したのです。この会社の二代目の社長は、私と中学時代の同期で、身近なパン製造会社でした。子供の頃は学校給食は勿論、日常的においしく頂いたパンで、私の年齢の人たちはこぞって食べたものです。十数年前の同期会の席上、社長は私に「年々子供の数が減ってしまい、先の展望が開けず嘆かわしい」と漏らしていました。それが自主廃業という結果になってしまいました。

 人口減少は、社会保障のあり方など国の制度にとって大きな問題ですが、私たちのごく身近にも大きな影響を与えていることに気づかされました。