いかに生き、いかに死ぬか

圓應寺 住職法話

住職法話 第121回

仏教に見る祈りと教え
【仏教を今に生かす「いかに生きるか」の考察】

132-141

「大乗仏教の「顕教」と「密教」、特に密教について」

 前回のこの項では仏教の歴史と基本に立ち返り、仏教の誕生に触れた後「大乗仏教」と「上座部仏教」について述べました。今回は大乗仏教の「顕教」と「密教」、特に密教について述べます。又、山形で声明コンサートがありましたので急遽その模様を「臨時添付」、併せて当圓應寺観音祭礼と最上三十三観音子歳連合ご開帳の案内を掲載しました。

金剛合掌
(宗派のイラストより許可を得て使用 転載不可 以下同じ)

Ⅴ- 132 「顕教」について

 前回のこの項では、お釈迦様の教えの解釈の違いで、上座部仏教と大乗仏教に分かれ、その後大乗仏教は「顕教(けんぎょう)」と「密教(みっきょう)」に分かれたことを述べました。それでは「顕教」と「密教」とはどういうことなのでしょうか。先ず「顕教」と「密教」という概念は、真言宗の開祖・空海が、自身が開いた真言密教を説明するために大乗仏教の中で分類したものです。したがって顕教は密教の対義語に当たる概念です。

 初めに顕教についてです。顕教は万物をあまねく照らす宇宙の根本仏として毘盧遮那仏(びるしゃなぶつ・目に見える仏として「奈良の大仏」が代表的)を究極の仏様と考えます。この仏さまは私たちに直接教えを説かれることがないため「沈黙の仏」とも言われています。その上で私たちに教えを説く為に人間であるお釈迦様を化身として派遣されたと考えます。お釈迦様は人間の言葉で教えを説き、私たちは毘盧遮那仏の教えを受けます。お釈迦様は私たちに分かりやすい言葉で顕(あきらかに)説いたという教えが顕教なのです。

大日如来 (転載不可)

Ⅴ-133  「密教」について

 これに対して密教は、宇宙の根本仏を大日如来(だいにちにょらい)と考えます。この仏さまは、自ら教えを説かれることから「雄弁の仏」とも言われます。このため密教においては直接大日如来からその教えを受けようとしますが、大日如来の説かれる教えは余りに奥深く、私たちはすぐさま理解することが出来ません。しかし身(しん)・口(く)・意(い)の三密の実践(身密…手に仏様の印を組み、口密…口で真言を唱え、意密…心で本尊様を観想する)をすることによって大日如来と一体となり、言葉だけでは伝えきれない奥深い秘密の教えを体得することで、煩悩から解脱しあらゆる苦しみから解放され「即身成仏」(この身このままで仏になる)出来るという教えなのです。

 さらに密教の行者は、教えや作法を師匠から行者(弟子)に直に伝えられ、公にされない部分が多く秘密の教えという意味も含めて「密教」と言われているのです。

虚心合掌(転載不可)

Ⅴ-134 雑密と純密

 昔のインドにおける仏教では、大乗仏教の発展と共に真言(漢文や中国語に訳していないサンスクリットなどの文言で、「真実の教え」という意味)を唱えることで招福除災を祈るようになったと言われています。この時代の密教を雑密(ぞうみつ)と言います。その後7世紀頃になると密教の体系を表した経典(大日経、金剛頂教)がまとまることによって大日如来を究極の仏と考えるようになりました。この時期には密教的仏様の世界観を現した曼荼羅(まんだら)も登場したのです。そのためこの時期以降の密教を純密と言います。

念珠(転載不可)

Ⅴ-135 東密と台密 

 密教は中国を経て7世頃に日本に部分的に伝来、9世紀に遣唐使として当時の唐の国に渡って密教を持ち帰った空海と最澄によって体系的に伝えられました。空海は京都の東寺を根本道場として真言密教を広めたため、「東蜜」と呼ばれ、一方の最澄とその弟子たちが体系化した天台系の密教(最澄の入唐は天台学を学ぶことが主目的)を台蜜と呼ぶようになったのです。

 尚、空海が遣唐使の一員として入唐、密教の大家・恵果和上に極意を伝授された経緯については、この項の第51回(2015.06.01)「弘法大師・空海」と第56回(2015.11.01)「弘法大師・空海恵果和尚からの密教伝授」で詳しく延べておりますので参照ください。

弘法大師御影 (転載不可)

Ⅴ-136 真言密教と・天台密教

 天台宗は法華経を中心としつつ、禅、戒律に加え、最澄が遣唐使として持ち帰った天台宗の一部に密教の教えが含まれていたため、最澄の弟子たちによってその後、天台宗に「密教」を取り入れた形で体系化し、天台密教となりました。

 これに対して、空海が恵果和上から伝授されて開いた真言宗が、純粋の密教と言えるのです。

聲明コンサート

「祈りの声 奏でる声」

真言宗
天台宗

2021.3.6

Ⅴ-137 臨時添付 (真言密教と・天台密教の声明 ①)

 山形市に新しく出来た「山形県総合文化芸術館」のオープニング事業の一環として、今年(2021年)の3月6日、「聲明コンサート祈りの声奏でる聲ー花びらは散っても花は散らないー」と題して、声明コンサートが開催されました。

 運良く聴きに行くことが出来き、しかも真言宗と天台宗に深く関係しますので簡単にその模様を「臨時添付」します。

 出演は、声明の二大宗派である真言宗僧侶と天台宗僧侶で構成された「声明の会・千年の聲」25人ほどの方々でした。

※掲載の写真3枚は、パンフレットを使用したものです(会場での写真撮影は禁止です)。

Ⅴ-138 臨時添付 (真言密教と・天台密教の声明 ②)

 声明は仏教と共に古くインドに生まれ、中国から日本に伝わった後、弘法大師の時代を経て、約1200年の歴史の中で、日本独自の発展を遂げ現在に至っています。この声明は、僧侶が唱える声楽と言えるものですが、日本の声明は楽器などをほとんど用いず、他の仏教国には見られない形で発展してきました。

 この長い歴史を持つ声明は、能、平曲、浄瑠璃、謡曲、民謡そして日頃お唱えしているご詠歌や演歌にも大きな影響を与えたと言われています。

Ⅴ-139 臨時添付 (真言密教と・天台密教の声明 ③)

 さて、今回のコンサートです。伝統の声明曲の他、東日本大震災で犠牲になった人の和歌を題材にした現代の声明も発表されました。鍛え抜かれ澄み渡った声、僧侶の会場全体の移動、照明の魅力等々、様々な演出。そして一体となった和と旋律。見事な声明に休憩無しの1時間30分、正に聴き惚れました。

 又、ご詠歌につきものの、声のゆれを表す、「アヤ」「ツヤ」などは、声明が原点であることを再確認出来たのでした。

 新築された今回の会場は、県が力を入れて作り上げたもので、音響もよく、県内最大のホールということで、様々な芸術の発表の場となります。私は初めて入って「いいものが出来たなぁ!」と。

Ⅴ-140 お知らせ ~最上三十三観音連合ご開帳と圓應寺観音祭礼 ① ~

 当圓應寺観音は、最上三十三観音第四番札所として、昨年「子年(ねどし)」を記念して、「最上三十三観音子歳連合御開帳」を5月~10月の半年にわたり実施する予定でしたが、残念ながら新型コロナの影響で一年延期になりました。これにより今年の5月1日~10月31日までの間、「子歳」ご開帳として執り行われます。
 一方、圓應寺観音は、毎年4月18日を単独の祭礼日と定め、祭事を含めて法要を執り行っており、今年は、表示したチラシのように連合ご開帳の立上法要と圓應寺観音祭礼法要を併せて盛大に実施することになりました。
 詳細は次の「141項」の通りですが、どうぞ4月18日、及び5月からの半年の間に、最上札所を参拝されますようご案内申しあげます。

【追加】山形市で新型コロナウイルス感染者数が急増したことを受けて、山形県と山形市が3月22日、独自の緊急事態宣言を山形市に発出しました。4月11日まで不要不急の外出や移動の自粛が求められました。したがって情勢によっては、4月18日の大法要並びに連合ご開帳の行事は、縮小又は中止となる場合があります。宜しくお願い致します。

Ⅴ-141 お知らせ ~最上三十三観音連合ご開帳と圓應寺観音祭礼 ② ~

(以下は、関係者に配布した案内文書です)

令和3年3月吉日

各位

圓應寺奉賛会々長  
髙橋 茂雄
同 別当(住職)  
埀石 啓芳

最上三十三観音連合ご開帳立上・圓應寺観音祭礼大法要参拝案内について

 圓應寺観音は、ふくよかな眼差しで参拝者を迎え、家内安全・招福除災の他、胎内ご本尊の特性から「良縁・子宝・安産」の観音様として多くの信仰を集めて来ました。又、最上札所第四番として永年に亘り多くの方々にお参り頂くと共に、毎年4月18日を「圓應寺観音祭礼日」と定め、地域、檀信徒の方々の協力を頂いて、「観音様のお祭り日」として法要を含めた祭事を執り行ってきました。

 一方、昨年の令和2年は十二支の始まりである「子歳」に当たり、これを記念して恒例の最上札所全体として「子歳連合ご開帳」を実施する予定でしたが、新型コロナ禍により今年に延期となりました。

 これを受け、圓應寺札所として上記二つの祭事・法要を下記の通り執り行うことになりました。皆様におかれましては滅多にない縁日となりますので、是非参拝頂きますようご案内いたします。

Ⅰ 最上三十三観音子歳連合ご開帳立上・圓應寺観音祭礼大法要

日 時 令和3年4月18日(日)午前10時~11時
内 容 祭事・法要、秘仏の安置と縁綱結び
その他 ・マスクの着用宜しくお願い致します
    ・法要参列の方に「圓應寺観音智慧のひかり」名入りミニ携帯電灯を先着
     150人(ご家族当たり一個)にお配りします
    ・例年の午後2時からの法要は今回はありませんので宜しくお願い致します

Ⅱ 最上札所全体のご開帳

  • 5月1日~10月31日までの半年間
  • 各札所で秘仏に直接参拝できます
  • 記念印、記念御影等を準備

Ⅲ 連合御開帳記念最上三十三観音巡礼について

今回は新型コロナ禍の影響を考え、規模を縮小し昨年参加予定の方を中心
に参拝することにしました(新規募集はしません)


やさしい仏教・やさしいお経
***ご詠歌・和讃教室講員募集***

 老若男女、檀家であるか否かに拘わらず、関心のある方ならどなたでも入講できます。
 御詠歌はやさしい言葉と心にふれる節で仏の教えを伝えます。お唱えすることにより、安らかな心に満たされます。お大師さまの教えを学び信心を深め、生かされて生きる喜びをかみしめ、人生の深まりを求めましょう。
 ご詠歌の仲間は仏の道を歩み、菩薩になろうとする人々の集まりです。ご一緒に楽しくお唱えしませんか。きっと新しい人生が開けます。

練習は月2回、日曜日の午後2時~4時。申し込みは住職に