いかに生き、いかに死ぬか

圓應寺 住職法話

住職法話 第119回

有限の人生そして死を意識して
【「いのち」の考察】129-133

「NHKマイあさラジオ 「人とのつながりが寿命を延ばす」について 3」

前回は、NHK「マイあさラジオ」の「健康ライフ」で放送された 「人とのつながりが寿命を延ばす」を一時中断し、筋萎縮性側索硬化症(ALS)女性の積極的安楽死と嘱託殺人事件について述べました。今回は、元に戻って2回に亘って述べた「人とのつながりが寿命を延ばす」の3回目(最終)です。

鹿児島県・池田湖と開聞岳

Ⅲ-129 人との繋がりが寿命を延ばす~孤独を愛する人へ~

前回の最後でNHK総合テレビ「ためしてガッテン」の情報を紹介しましたが、再度「マイあさラジオ」に戻ります。

これまで「人とのつながりが多いほど長生き」ということが示されてきましたが、一方で人には、人付き合いが苦手な人、孤独が好きな人もいます。この様な人にとっては大問題となります。石川先生は、「孤独を好む人を調べてみると孤独遺伝子を持っていることが分かっている」ことを示した上で、「生命の種の保存から考えると、お互いがつながり、社会性を持った方が生き残りや長生きに有利に働くという法則があるにもかかわらず、なぜ孤独遺伝子というものがあるのかは大きな謎になっています」と。

それでは何故孤独が必要とされるのでしょうか。先生は近年提唱された仮説を次のように紹介しています。「もし集団の中で何か感染症が流行した時に、絶滅を避けるために孤独遺伝子があるのではないか?」と。

昨年から続く新型コロナウイルス感染とその恐怖、先生の提起が現実味をおびてしまうのですが‥‥。

Ⅲ-130 人との繋がりが寿命を延ばす ~ 孤独な人は短命? ~

さて、それでは孤独は短命と断言されてしまうのでしょうか。先生はこの疑問に次のように答えています。「孤独な人たちの統計では寿命は短いのですが、個々人では長生きしている人も。これは喫煙習慣があっても長生きする人がいるのと同じで、どのような場合でも例外があり、様々な要因が寿命の長さに影響していると考えられます」と。さらに先生は孤独好きな人が「無理をして人と付き合えば、逆にストレスが溜まり健康によくありません。出来る範囲で無理のない付き合いが良いと思います」と。

Ⅲ-131 人との繋がりが寿命を延ばす ~ 長寿のために大切なこと ~

現代社会はテレビ、ラジオ、新聞、インターネットをはじめとして溢れるような情報社会です。健康・長寿情報などどれが本当なのか?混乱することさえあります。そんな中で、先生は「私たちが生きてゆく上で何が大切なのか、自分自身を振り返る事がとても大切です」と。そして「元気で生きてきた人に、なぜいままで元気で生きてきたのか?と聞いてみると『特別な事はやっていない』と答える人が多い」ことを指摘した上で、そのような人は「今まで当たり前にやってきた習慣が健康長寿のために役に立っていた」ということが分かってきとのことです。

最後に石川先生は「新しい情報に触れる事も大切ですが、今まで積み上げてきた良い習慣が自分の健康に一番良く、その基礎の上に新しい良い情報を取り入れる様にすればより良い人生が送れると思います」と結ばれたのでした。

Ⅲ-132 人との繋がりが寿命を延ばす ~ 改めて人との繋がりの大切さを ⅰ~

皆さん!3回に亘って予防医学研究者で医学博士・石川善樹先生の放送内容を紹介しましたが、長寿だけに止まらず健康寿命にとっても人と人の繋がりが大切であることが分かりました。

以前にも述べましたが、私達は人と人の間で生きる「人間」でした。人は一人では生きて行くことは出来ません。これは人の誕生から原始時代を経て現代に至る歴史的事実と言っても過言ではありません。

Ⅲ-133 人との繋がりが寿命を延ばす ~ 改めて人との繋がりの大切さを ⅱ ~

翻って現代の生活に少し心配な状況も生まれています。「スマホ時代」とも言われ、直接顔を見合わせての会話ではなく、指先による文字会話の機会が多くなってきました。便利であることは間違いのないことですが、感情を含めた対話にはなりません。多くの生きものの中で、感情は私達人間のみが持つものです。人としての繋がりは感情抜きでは深いものになりません。加えてスマホゲームに熱中する余り、スマホ依存症~スマホ障害になってしまう人もおられるとのことです。結果、閉じこもり状態で社会活動の支障、場合によっては家族との繋がりにも危機的状態になってしまう場合も。

今、改めて人との繋がりが、いかに私達人間にとって必要不可欠なことであることを再確認したいと思うのですか如何でしょうか。