圓應寺 住職法話
住職法話 第117回
日本社会の現状
【福祉的社会学的考察】124-130
「人口減少問題関係について」
この項の「Ⅰ 日本社会の現状」から、 「 Ⅴ 仏教に見る祈りと教え」まで、先月で23巡しました。今月から又、 「Ⅰ 日本社会の現状」に戻って現代社会の私達の生活を見ていきたいと思います。前回のこの項では国の病床数削減と介護施設さらに医療機関の再編統合と新型コロナの影響について述べました。今回は新型コロナ禍の気になる傾向について述べた後、人口問題関係(平均寿命の延びと65歳以上の高齢者人口、及び100歳以上の人口、そして人口減少問題)について述べます。
Ⅰ-124 新型コロナ禍の気になる傾向 ①
今年(2020年)1月に国内で新型コロナの感染者が確認されてこの12月で一年になります。この間、私達の生活は様々な分野で大きく変わりました。自粛、自制、我慢等々の要請の下、具体的にはテレワークの出現、宿泊・飲食業を中心とした倒産、旅行業の経営難、非正規雇用者を中心とした雇い止めの多発と生活難等々、枚挙にきりがありません。そんな中で、日常的には余り報道されない最近のコロナ禍影響の8項目について簡単に触れたいと思います。
① 国内の自殺者の増加
ここ数年の自殺者数は減少傾向にありましたが、コロナ禍の下で7月から3ヶ月連続で前年より増加しました。特にこれまでの傾向にはなかった女性の増加と若者の増加率が目立っています。速報値ですが、7月は1818人(前年比+25人)、8月1854人(同+251人)、9月は1805人(同+143人)となりました。この中で、女性は7月88人(15.6%)、8月187人(40.3%)、9月138人(27.5%)の増加となりました。男性の方は、7月63人(5.1%)減、8月64人(5.6%)増、9月5人(0.4%)の増加で、女性の急増が顕著になっているのです。
又、8月の年齢別の内訳を見ると、全体で前年比22.3%の増加でしたが、40歳未満の自殺者は44.2%という異常な割合になりました。その中でも女性は76.6%も増えているのです。
このように女性と若い世代の自殺者が増え、全体を押し上げています。このような事態に至った理由は何なんでしょうか。40歳未満、とくに女性に非正規雇用者が多く、仕事を失った人が増えたこと。テレワークなどで在宅時間が増え、夫との関係で妻により過大のしわ寄せとストレスがかかっていること等があるのではないかと言われています。但し、明治安田生命のアンケート調査(2020年11月16日発表)によると新型コロナ禍で「(家庭での)会話の機会が増えた」「一緒に食事する頻度が増えた」ことなどで「夫婦仲が良くなった」が19.6%に対して「悪くなった」のは6.1%という報告もありました。又、一時「コロナ離婚」が増えたというような報道もありましたが、一年を通してみるとむしろ減少しているようです。このように真逆の指標もありますが、コロナ禍での暮らし方を考える一助としたいものです。
② 来年(2021年)、出生数大幅減少へ
今年の出生数が84万人台半ばになることが予想されています。この人数は統計を取り始めた1899年以降最少なのです。それだけでは止まりません、来年(2021年)の出生数は70万人台になる可能性もあると言われています。やはり新型コロナウイルス感染拡大による雇用情勢や出産環境の悪化がその原因としてあげられています。
③ 医学生の勉学と経済生活の悪化
学生のアルバイト困難を初めとしてその生活困難が指摘されていますが、医学生の場合はその特性として必要な患者さんへの問診を経験できない等の問題が出て来ています。医師としての基本的手技に関わることで、心配される事態です。
Ⅰ-125 新型コロナ禍の気になる傾向 ②
④ 骨髄ドナー登録者の減少
骨髄バンクへのドナー(提供者)登録者数が制度開始以来初めて減少しています。競泳の池江璃花子選手の白血病が明らかになった2019年2月時点では、登録者が大きく伸びたものの、緊急事態宣言発令の4月以降、9月まで前年度を下回っているのです。外出自粛、献血バス出動減少などがその要因となっているようです。
⑤ 介護事業の休廃業・解散
この傾向についてはこれまでも述べてきたことですが、「老人福祉・介護事業」の倒産が、1~9月で前年比10.5%増の94件、過去最多となりました。介護業界はこれまでも深刻な経営不振が続いており、新型コロナ禍が追い打ちを掛けた状態に。この状態が続くと年間120件を上回り、年間最多記録を更新するのではないかと危惧されているのです。
⑥ 銚子電鉄の営業危機
これまでも全国的に経営努力が伝えられた銚子電鉄(この電鉄、現在NHK・BSで再放送中の「澪つくし」に出てくるの電車と思うのですが)。外出、旅行者の減少でますますの経営危機に。これに対して、テレ朝系で放送中の「ざわつく!金曜日」で応援放映。銚子電鉄の商品販売が大盛況になったとか(乗客数が増えますように!)。乗客減少は銚子電鉄だけではなく、全国の特に中小私鉄に深刻な影響をもたらしているのです。
⑦ 「1年前より幸せですか?」(2020年10月24日、朝日新聞アンケート)
この問いに「はい」と答えた人が36%に対して「いいえ」が圧倒的多数の64%になりました。「はい」と答えた人の理由は、「家族と一緒に過ごす時間が増えた」「外出自粛で無駄な出費が減った」「在宅で心にゆとりができた」「家族との会話が増えた」の順。対して「いいえ」の理由は、「国内旅行に行きにくい」「マスクがストレス」「三密回避など制限の多さがストレス」「外食や飲み会に行けない」の順でした。「はい」の人たちの理由に納得できるものの、やはり自粛、自制、制限などによるストレスが幸せ感を奪っているのです。私自身も「いいえ」かな?
⑧ 富の集中、35人に20兆円の資産
米国誌「フォーブス」に記載された10億ドル(約20.1兆円)以上の資産を持っている富裕層を見ると、日本の富裕層として35人が掲載。単純計算で一人5700億円とのことですが、その第一位はファーストリテイリングの柳井正氏で3兆9000億円、次いで二位はソフトバンク孫正義氏の3兆4500億円とのことです。このように資産が急騰しているのは先月(2020年11月)に29年ぶりの高値となった株価上昇が影響していると言われています。日本の場合はその株式に日銀が公的資金を投入して株価を押し上げる要因になっていると言われています。このような株価の上昇は本当に日本経済の実態を現しているのでしょうか?。新型コロナ禍で苦しむ一般大衆の生活とは別世界とも言えるようなもう一つの現実です。
⑨ 葬儀や年回忌法要の様変わり
会葬者や参加人数の制限と減少等々、多大の影響が出ています。この件については機会を見て改めて考えてたいと思います。
Ⅰ-126 日本人の平均寿命と65歳以上人口、100歳以上人口共に過去最多に
◆ 日本人の平均寿命
「日本人の寿命 過去最長」との内容が、2020年7月31日厚労省「簡易生命表」で発表されました。それによると平均寿命は女性が87.45歳(前年比 +0.13歳)、男性81.41歳(前年比 +0.16歳)となり、ともに過去最高を更新したということです。
◆ 65歳以上人口、100歳以上人口共に過去最多に
① 2020年9月20日、敬老の日を前に総務省が推計した65歳以上の人口は、前年比30万人増加して、3617万人と過去最多を更新、総人口に占める割合も0.3%増加の28.7%でこちらも過去最高となりました。 又、70歳以上の総人口に占める割合は、22.2%で、女性に限ると4人に一人(25.1%)が70歳以上となりました。
一方で65歳以上の高齢者の就業者数は16年連続増加し、892万人で、過去最多を更新しました。
高齢化率は今後も増え続け、2040年には35%を越える見込みとのことです。
② 100歳以上、初の8万人超。 厚労省は9月15日、全国の100歳以上人口が8万450人、初めて8万人を越えたことを発表しました。前年比9176人の増加で、50年連続で増加し、年間増加数も過去最多となりました。このうち女性は7万975人で全体の約88%を占めました。
人口10万人当たりの全国平均は63.76人。トップは島根県が8年連続で127.60人、高知県、鳥取県が続きます。反対に最も少ないのは31年連続で、埼玉県が40.01人、愛知県、千葉県が続きます。
100歳以上の人口は、調査開始の1963(昭和38)年に153人、1998(平成10)年に1万人越えになりました。
Ⅰ-127 出生数90万人割れ① ~人口の自然減最大に~
一年前の数値になりますが、2019年12月24日厚労省は人口動態の年間推計を発表しました。その内容は次の通りですが、新聞各紙の論評も含めて紹介します。
① 2019年誕生の子供は86万4千人との推計結果に。調査を始めた1899(明治32)年以降で初めて90万人を下回ることに。前年より5万4千人の減少で、親になる世代の人口減少が大きく影響。
② 国立社会保障・人口問題研究所の2017年推計では、21年の出生数を86万9千人と見込んでいたが、予想より2年早く減少が進んだ。これは「人口の多い団塊ジュニア世代がほぼ出産年齢を過ぎ、いよいよ人口の少ない時代が親となっている。縮小する親世代が、さらに小さな子世代を生む『縮小再生産』が始まっている」(19.12.25朝日・金子隆一明治大学特任教授談)。さらに「『改元効果』は、あってもわずかでは、経済状況の影響かも知れない」と。
③「今親になることが多い30代半ばから40代後半は、90年代半ばからからの景気低迷期に社会に出た就職氷河期世代。非正規採用が多く、賃金水準も他の世代より低い」(19.12.25朝日)。
④ 人口減少の背景には、非正規雇用者の増加(2019年10月時点で労働者の38.4%)があり、結婚や子育てを諦めざるを得ない厳しい現実。
⑤ 2019年の結婚は、前年比3千組減少の58万3千組で戦後最少、離婚は約2000組増で、21万組の見込み
⑥ 親の世代の減少は、仮に出生率が上がったとしても長期に亘って人口減少が続くことになる。
Ⅰ-128 出生数90万人割れ② ~人口の自然減最大に~
⑦ 出生数の変遷
- 最多は、第一次ベビーブームの1949年の269万7千人
- 第二次ブームの70年代前半以降は減少傾向となり、05年に死亡数が出生数を上回り、自然減に(16年にいったん出生数が上回ったが)、2016年から100万人を下回る
- 15年に1億2710万人だった人口が、29年に1億1千万人、42年に1億人台、53年に9千万人台になる予測(国立社会保障・人口問題研究所)
⑧ 死亡者は戦後最多の137万6千人(前年比1万4千人増)、自然減は51万2千人(同6万8千人増)となり、13年連続の減少ではじめて50万人を越える見込みに。これは鳥取県の人口に近い単位で減少したことを意味している。
⑨ 社会保障制度の支え手である現役世代の減少、これ以上進めば、年金や介護制度の維持に大きな支障が
⑩「安倍首相はかつて少子高齢化を「国難」と呼んで解散。その後、働き方改革や幼児教育・保育の無償化などを掲げてきたが出生数を見る限り効果は出ていない」(2019.12.25朝日)
⑪ 「安倍晋三首相もことあるごとに少子高齢化を『国難』と強調、対策に取り組む姿勢を示す。~中略~まず非正規で働く若者の待遇改善、出産や子育てに関する経済支援などでこれまでの論点や施策が正しかったか再検証が必要ではないか」(19.12.25山形新聞)
Ⅰ-129 人口減少 過去最大に
2020年4月14日、総務省が19年10月1日時点の人口推計を発表しました。それによると
- 外国人を含む総人口は、前年より27万6千人少ない1億2616万7千人。減少数は比較可能である1950年以降最大
- 働き手の中心である15~64歳の生産人口は7507万2千人で、全体に占める割合は0.2%減少の59.5%で最低を更新した
- 65歳以上の人口は3588万5千人で、全体の28.4%。 75歳以上は1849万人で14.7%。いずれも過去最高に
- 14歳以下は1521万人の12.1%で過去最低に
- 40道府県の人口減少に対して東京・神奈川・千葉・埼玉の東京圏と愛知、滋賀、沖縄が増加。
- 総人口のうち日本人は48万7千人減の1億2373万1千人、外国人は21万1千人の増加で、243万6千人
以上が発表の骨子ですが、沖縄を除いて大都市への人口流出傾向が続いているのです。
Ⅰ-130 2020年6月5日、厚労相「人口動態統計」による追記① 2019年出生、最少の86.5万人
今回のホームページで述べてきた内容と重複するところが多々ありますが、その後「人口動態統計」が発表になりましたので、二駒分追記します。
新しい発表によりますと、2019年生まれの赤ちゃんは、統計開始以来最少の86万5234人、前年比5万3166人の減少で、90万人を割ったのは初めてのことです。又、合計特殊出生率は1.36で前年より0.06低下し、政府が掲げた「希望出生率1.8」にはほど遠い現実となりました。
Ⅰ-131 2020年6月5日、厚労相「人口動態統計」による追記② ~日本人人口50万人超の減少が確定~
2020年1月1日時点の国内日本人、1億2427万1318人で、前年から50万5046人(0.40%)減少。減少は11年連続、減少数、減少率とも過去最大。減少は過去最多の44道府県、増加は東京、神奈川、沖縄の3都県のみで、人口偏在が顕著に。
2019年の出生数は86万6908人で最少を更新し、初めて90万人以下に。死亡者数は137万8906人で過去最多。働き手の15~64歳は全体の59.29% (前年比0.20%減)。65歳以上は0.35%増の28.41%。
以上、人口動態の数値を並べ、見にくくなってしまいましたが、人口の確定数値から、人口減少の幅がますます大きくなっており、少子化と高齢化がますます進んでいるのです。