いかに生き、いかに死ぬか

圓應寺 住職法話

住職法話 第115回

日々の生活の質をいかに高めるか
【生活の質の考察】126-130

「妻の自動車運転免許更新と妻の踏ん張り 1」

 

 前回のこの項では、2019年東京大学学部入学式での上野千鶴子氏の祝辞について述べました。

 今回のこの項では私事で大変恐縮ですが、妻の自動車運転免許更新と妻の踏ん張りと題して、うっかり、迷走、頑張り、踏ん張りのどたばた劇について2回に亘って述べます。

Ⅳ-126 更新手続きの失念!

ハナミズキの写真

 直接妻のどたばたに触れる前に、私自身の自動車運転免許証更新について述べます。今年(2020年)、5月に77歳になる私に、昨年12月の末、「高齢者講習会等のご案内」のハガキが県公安委員会から届きました。私の年齢になると直接免許センターに行っての更新は出来ず、最寄りの自動車学校で認知症検査、講習などを受け、その上で免許センターで更新手続きをとることになります。
 そこで早速、第一希望の自動車学校に申し込みの電話を入れたのですが、「5月までは満員」と断られてしまい、「4月でしたら大丈夫」という学校にたどり着くまで一苦労あったのです。

 その様子を妻は感慨深げに眺めていました。妻は私より一年早く昨年(2019)、すでにその検査等を経験済みだったのです。
 暫くして、妻は自分の免許証を取り出ししげしげと眺め始めました。そして「これ古い免許証だよね、去年の6月で切れてる。新しい免許証どこに?」と探し回ったのですが、勿論出てきません。更新手続きが完了していれば古い免許証そのものは手元にないはずです。  
    
 妻はその時点でことの重大さに気付いたのです。「アッ!検査と講習を受けてそれでおしまいという感じで、手続き忘れた!」と。思えばその時期は、別項で紹介した孫の得度式などの準備で多用な日々だったのです。すっかり失念してしまったのでした。そして恐ろしいことに無免許状態で半年以上運転していたのです。

Ⅳ-127 自動車学校に

赤いツツジの花の写真

 気付いた妻は、直ぐ免許センターに電話相談。指導を受けて失念一年以内の特例を受け、仮免許を頂いたのでした。その上で、センターの職員さんに相談したところ「学科について直接、センターで試験を受けても中々困難……、一度自動車学校に入って勉強した方が近道のようです」との助言を受けたのでした。   
     
 助言を受けた妻は、仮免許を持って最寄りの自動車学校に入校しました。ほぼ毎日家族の送迎、それが出来ないときは公共機関のバスで通学です。何よりも優先しての通学と免許取得のための学習が年明けと共に始まりました。
     
 聴けば、入学者は若い人ばかり、妻は唯一の高齢者という情況とのこと。帰宅しても学科の勉強最優先。日頃のテレビ観戦もない学習一点張りの日々が続きました。
 その妻に対して私は、「余り気を詰めるな、3月中に(免許を)取れればいいから」と支え、元気づけを繰り返していました。勉強に励みながら「ややこしい」「分からん」「頭に入らない」等々を呟きながら時に私に問題の質問をするのでした。  
     
 私は、運転は今まで毎日やってきたのでそんなに問題ではないが、問題はやはり学科。息子娘達家族も同様の見方で「お母さんよく頑張ってる!」と、応援、励ましの声。

Ⅳ-128 学校卒業と学科試験

ピンクのツツジの蕾の写真

 そしていよいよ、自動車学校の卒業試験日に。実地試験はパスしたものの初日は学科で合格に至らず、二回目の試験(96点)でパスすることが出来たのです。私は早い合格にビックリしたものです。  
    
 さて、いよいよ免許センターでの学科試験です。時はすでに二月に入っていた月曜日、意を決して妻は試験会場に臨んだのです。私は妻には「長い目でいいから、受験練習のつもりで何回も受ければいい、三月中に何とかなればいい」との思いで送り出しました。
    
 その日の昼前、妻から電話「ダメだった、85点」と。合格ラインは90点なのです。それでも帰宅した妻の表情は予想以上にさばさばして即、勉強に臨んだのでした。そして再度の受験は翌日の火曜日に。

Ⅳ-129 再度の受験

赤いツツジの花の写真

 そうです。私も初めて知ったのですが、試験は、土日と祝祭日を除いて毎日実施されており、受験生は1750円の受験料を支払えば、連続でも何回でも受験できるのだそうです。妻の勉強には熱が入り、夜遅くまで朝は早くから出かけるまで奮闘です。「行って来まぁ~す!」と元気よく。結果が出るのは11時過ぎ、それまで私は何となくソワソワ。そして電話「ダメだった…89点」。チョット気落ちした感じで。帰宅した妻に「たいしたもんだ、もうチョットだがね、一日で点数増えたんだから!」と。

Ⅳ-130  受験三度目

ピンクのツツジの蕾の写真
境内の庭木

 そして水曜日、三度目の受験に。やはり11時過ぎの電話「ダメだった、又89点!」と。帰宅した妻「職員さんから『惜しかったですね、あと1点』と慰められた」と。「どこを間違えたのか知りたいと思って聴いたが『それは分かりません』と。コンピューターでの採点だから仕方ないか」などと。三回目の失敗とあってさすがにこたえた様子に。
 「いいがね、たいしたもんだ、場合によっては点数が逆に下がってしまうのではとも心配していたのに、連続して89点なんだから」と私。
 妻の猛勉強は続きます。結果を受けて、昼→晩→夜→早朝と勉強一筋。その姿は正に受験生そのものなのです。こんなに勉学に励む妻の姿を見たのははじめて、お目にかかったことはありませんでした。
      
 このように免許再取得に頑張る妻、考えようによっては免許証返上の機会ということでもあるのですが、実は寺にとって車の運転は大変重要なことなのです。一般家庭同様、日常の買い物に必要なのですが、量の多さ、檀家さんとの交流、飲み会時の住職送迎等々。まだまだ運転は必要なのです。  
      
 さて、四度目の受験となった木曜日。もし不合格となれば翌金曜日は寺の都合で受験できないため、三日間空いて次週の月曜日になります。そんな事情もあって妻の必死さがひしひしと伝わってくる状態になっていました。