いかに生き、いかに死ぬか

圓應寺 住職法話

その他 住職略歴・臨時法話など

「臨時法話 平成28年東日本大震災慰霊・復興祈願法要」

去る3月5日、当圓應寺で執り行った
「平成28年東日本大震災慰霊並びに復興祈願法要」の模様を紹介します。

 「東日本大震災」。1000年に一度と言われる大震災から5年になります。大震災と大津波、そして「人災」と言われる原発事故。 直近の調べによると震災で亡くなられた方は15,894人、行方不明者2,561人、震災関連死者3,410人を数え、震災の犠牲者は21,865人に上っています。 一方原発事故によって福島県から県外に避難している方は、今年の2月26日現在43,139人を数え、当山形県にも今年3月3日現在3,121人(福島以外を含めると3,442人)の方々が避難され、原発による終わりのない苦難の生活を続けておられます。  大震災直後、被災地から県内の火葬場に多くのご遺体が運ばれました。その火葬の前で短い読経を上げさせていただきました。 以来、四十九日、一周忌から毎年法要を執り行ってきましたが、今年も16人の僧侶の方々からご協力を頂き、標記法要を行う事が出来ました。

参加を呼び掛けた「法要案内」のチラシです

当日、参加の皆さんにお配りした法要次第と一部配役です。

開式を前に、式次第と配役の確認。

 集会場となった位牌堂。大勢の僧侶が参加する法要の場合、どのようなお経をお唱えするか、その順番、配役などを確認します。半鐘の「上堂の鐘」を合図に、式場へと進むことになります。

鐘を打つ常明寺・茅原英盛師。

 14時30分、職衆(本堂の内陣に入って読経する僧侶)の入堂を告げる「上堂の鐘」。この鐘の音を聞きながら職衆は式場(本堂)に進みます。

内陣に職衆が勢揃いしました。
小衲が導師を務め曲録に座り、同時に職衆も着座、いよいよ開式です。

 会奉行(えぶこぎょう)を務めた永林寺住職・奥平彰良師の進行で皆様にお配りした、下記の「智山勤行式」を全員でお唱えしました。

智山勤行式

懺悔文金二丁

【頭】我昔より造る所の諸々の悪業は
【助】皆無始の貪瞋癡に由る身語意從り生ずる所なり
一切 我 今 懺悔したてまつる金一丁

三歸禮文

【頭】人身受け難し 今既に受く
【助】佛法聞き難し 今既に聞く 此の身今生に度せずんば
   更に何れの生に於いてか 此の身を度せん
   大衆諸共に 至心に 三寶に歸依したてまつる
【頭】自ら佛に歸依したてまつる
【助】當に願わくは 衆生と共に 大道を體解して 無上意を發さん
【頭】自ら法に歸依したてまつる
助】當に願わくは 衆生と共に 深く經藏に入りて
  智慧 海の如くならん
【頭】自ら僧に歸依したてまつる
【助】當に願わくは 衆生と共に大衆を統理して 一切無礙ならん金一丁

十善戒

【頭】弟子某甲 盡未來際 
【助】不殺生 不偸盗 不邪淫 不妄語 不綺語 不悪口 不兩舌
   不慳貪 不瞋恚 不邪見
金一丁

發菩提心眞言

【頭】【助】おん ぼうちしった ぼだはだやみ   三反金一丁

三昧耶戒眞言

【頭】【助】おん さんまやさとばん   三反金一丁

開經文

【頭】無上甚深微妙の法は
【助】百千萬劫にも 遭い遇うこと難し われ今 見聞し
   受持することを得たり
   願わくは 如來の眞實義を解せんことを
金一丁

 皆さんでお唱えした後、
主催寺院を代表して当寺筆頭総代・高橋茂雄氏がご挨拶を申し上げました。

読経の中で、私が大震災で亡くなられた方々の慰霊と被災地の復興を祈願する「表白文」を述べました。以下はその文面です。

平成二十八年東日本大震災忌慰並びに復興祈願 表白文

 敬って真言教主大日如来、両部界会諸尊聖衆、別しては本尊地蔵菩薩、弘法大師等三国祖師、惣じては尽空法界一切三宝の境界に白して言さく。
 夫れ、平成二十三年三月十一日発生の東日本巨大地震と大津波は、一万八千有余人に及ぶ死者と行方不明者。避難者はピーク時に四十万人を越え、いまもって十四万人に及ぶ。 特に福島県にあっては放射能汚染によって十二万人の多くの方々が避難され、現在も尚、当山形県に四千人に及ぶ人々が不自由な生活を強いられている現況に。
 被災地にあっては岩手、宮城、福島県の人口減少が続く中、特に福島県にあっては原発事故によって全域が避難区域となっている浪江、双葉、大熊、富岡の4町で人口ゼロ状態が今なお続く現状に。  この状況下に於いて、原発事故に関連した自殺者は、去年一月から十一月迄で、十九人。一昨年の十五人を上回り、福島は毎年二桁で三県全体の累計自殺者数の半数以上を占める事態に。 終わりの見えない避難生活で、心身の状態が極度に悪化していることの証左なり。
 本日茲に、福島県からの避難者の方々も参列し、物故者の慰霊と被災地の一日も早い復興を共に祈念するもの也。
 この原発問題について仏教宗団の総本山・全日本仏教会は「負の遺産となる処理不可能な放射性廃棄物を生み出し未来に問題を残しているという現実、私たち全日本仏教会は『いのち』を脅かす原子力発電への依存を減らし、原子力発電に依らない持続可能なエネルギーによる社会の実現を目指します。」との声明を発表。
 伏して想う。
 「人のいのちと健康は経済性に優先!」。この当たり前の精神に立ち戻り、自然エネルギー等の持続可能なエネルギー活用により、原子力発電によらない脱原発・卒原発を目指し、子孫に明るい未来を提供するものぞと。
 大震災以降、四十九日忌慰霊法要をはじめ、毎年この時期に慰霊と復興祈願法要を重ね、本年は、御詠歌「般若心経和讃」並びに新曲「東日本大震復興和讃」を唱えると共に、山形マンドリンアンサンブルによる癒しの演奏をもって、檀信徒、地域住民、避難者が一堂に会して物故者諸精霊の追善菩提と被災地の早期復興を祈念するもの也。
 失われたおびただしい「いのち」への追悼と鎮魂こそ、私たち生き残った者にとって復興の起点であることを胸に

 (「ご参会の皆様、合掌の上、弘法大師様の御法号『南無大師遍照金剛』を導師と共に三回お唱え下さい」)

 南無大師遍照金剛
 南無大師遍照金剛
 南無大師遍照金剛

(「有り難う御座いました。合掌、お直り下さい」)

平成二十八年三月五日
 真言宗智山派
 大慈山圓應寺導師
 少僧正 啓 芳
        敬白