いかに生き、いかに死ぬか

圓應寺 住職法話

住職法話 第57回

日本社会の現状
【福祉的社会学的考察】58~63

「マララ・ユスフザイさんの演説とジャック・アタリ氏の考え 人口減少と高齢化の今後」

 この項の「Ⅰ 日本社会の現状」から、 「 Ⅴ 仏教に見る祈りと教え」まで、先月で11巡しました。 今月から又、 「Ⅰ 日本社会の現状」に戻って現代社会の私達の生活」を見ていきたいと思います。 但し、今回は今年(2015年)の10月に「マララ・ユスフザイさんの演説に想う ②」で安全保障関係法の懸念について述べましたが、 その答えとも言うべき考え方に出会いましたので、先ずその内容を紹介します。その後にいつもの「日本社会の現状」について述べます。 今回は予想される人口減少と高齢化について述べます。(前回のこの項では「65歳は老人?」について述べました)

Ⅰ-58 二人の発言に学ぶ ①
~平和と繁栄の歴史に学ぶ ジャック・アタリ氏①~

アンコールワット

 去る10月17日に放映されたNHKスペシャル「アジア巨大遺跡 第1集カンボジア アンコール」で出会ったものです。 その昔、アンコールは大繁栄した結果、アンコールワットをはじめとして多くの遺跡が残りました。

Ⅰ-59 二人の発言に学ぶ ②
~平和と繁栄の歴史に学ぶ ジャック・アタリ氏②~

朝日に染まるアンコールワット

 しかし当時のアンコールには民族や宗教の異なる多様な人々が住んでいたのです。 それにもかかわらず、何故繁栄できたのでしょうか。その答えとして、西欧を代表する歴史・思想家であるジャック・アタリ氏の考えを大凡次のように伝えたのです。 「アンコールの人々は相手が信じる神を支配するのではなく、自分の中にまるで家族のように取り込もうとしました。 その精神は寛容よりもさらに深いものです。自分とは異なる他者に共感する力、そして他人の幸せを尊重する姿勢、これらは社会を安定させ次の世代につなげていくために大切です。 自分をコントロールすることで他者との争いを避ける、これがアジアの文明のすばらしさです。 現代に生きる私たちは、この文明の歴史から多くのことを学ぶべきです」と。うんちくに富んだ指摘ではないでしょうか。 この様なアジア文明にとって「安全保障関係法」は極めて異質であり、対極にあるのではないでしょうか。改めてこの関係法律の問題にぶつかった感じがしてなりません。

Ⅰ-60 二人の発言に学ぶ ③
~シールズ関西の大澤茉実(おおさわまみ)さん~

バイヨン寺院(アンコール・トム)

 「安全保障関連法に反対する学者の会」のシンポジウム(2015年10月25日)に於ける立命館大2年・大澤茉実さんの安保関連法に反対の立場からの発言が注目を集めました。その概要は次の通りです。 「『当たり前』に順応するのではなく、何を『当たり前』にしたいのか常に思考し行動し続けること、どうやらそれだけが、未来を連れてきてくれるようです 」と述べ 「空気を読んでいては、いつまでも空気は変わらないんです」 と訴え、さらに「武器を持ち、人を殺すことが『普通の国』だというのなら、わたしはその『普通』を変えたいんです」と。 多くの学者が参加したこのシンポジュームで、最も注目を浴びた発言としてマスコミで紹介されました。

Ⅰ-61 二人の発言に学ぶ ④

タ・ケウ寺院

 ジャック・アタリ氏の「アジアの文明のすばらしさ」の考え、そして大澤茉実さんの安保関連法に反対し「空気を読んでいては、いつまでも空気は変わらないんです」 との訴え。 物事に対しての最大の悪は「無関心」とも言われますが、二人の発言はそれを踏まえた上での実践、身をもっての行動を期待しているのです。悶々とした心に明かりと指針を頂いた感です。

Ⅰ-62  日本社会の現状
~急速に進む人口減少・老齢化~ 2040年推計①

 さて、話を元の「日本社会の現状」に戻します。 昨年(2014年)9月に、日本創世会議の人口予想について述べましたが、今回は厚労省国立社会保障・人口問題研究所の推計に付いて述べます。 それによりますと、2040年推計人口は1億727.6万人となり、2010年を100とした場合、83.8%となります。 全都道府県で人口が減少し、北海道、高知県など25道県では2割超、秋田、青森県は3割超の減少を予想しています。又、65歳以上の人口が、全都道府県で3割を超えるとされました。

Ⅰ-63  日本社会の現状
~急速に進む人口減少・老齢化~ 2040年推計②

 私が住んでいる山形県は2010年の116万9千人から、30年は94万人、40年には83万6千人(10年の71.5%)と予想されています。 山形市は2010年の25万4244人から2040年には20万9380人に、大蔵村は3762人から1972人(52%)に大幅に減少すると予想されました。 何ともすさまじい勢いで減少してしまうのです。正に市町村の存亡の危機と言えるのではないでしょうか。