いかに生き、いかに死ぬか

圓應寺 住職法話

住職法話 第52回

日本社会の現状
【福祉的社会学的考察】53~57

「65歳は老人?」

 この項の「Ⅰ.日本社会の現状」から、 「 Ⅴ.仏教に見る祈りと教え」まで、先月で10巡しました。 今月から又、 「Ⅰ.日本社会の現状」に戻って現代社会の私達の生活」を見ていきたいと思います。
 前回のこの項では高齢者の就労状況について述べましたが、今回は「65歳は老人?」について考えてみます。

Ⅰ-53 65歳以上は高齢者? 

12.3.7 朝日新聞より

 統計上も「老人」は65歳以上となっています。65歳以上を「老人」としたのは、1950(昭和25)年代以降で、当時の平均寿命は、男女とも60代の時代でした。 65歳以上を「老人」としているのは、欧米を含めて標準のようです。
 さて、「人生80年」の時代にある現在、65歳以上は「高齢者」(「老人」とは少し異なりますが)なのでしょうか。2012年3月17日付朝日新聞によりますと 「65歳以上は高齢者だと思う?」の問いに、64パーセントの方が「いいえ」の回答をしており、65歳以上の方ではその72パーセントの方が「いいえ」と否定しています。 その理由として、「年齢だけでは決められない」、「平均寿命が延びている」、「健康な人が多い」等となっています。

Ⅰ-54 サザエさんの「波平」じいさん 

 少し余談になりますが、誰でも知っている漫画「サザエさん」は、故長谷川町子さんによって昭和21年に登場しました。 それ以来、サザエさんは永遠の24歳、波平じいさんも54歳という設定で、年をとることはありません。 思い出してくださいあの波平さんの姿形を。あの波平さんが和服を着て町中に登場したと考えますと、今の時代であれば80歳、少なくとも70歳を超えた感じではないでしょうか。 昭和20年代前半の男性の平均寿命は50歳代です(昭和25年は58歳)。この様に波平じいさんの54歳は、ほぼ死亡適齢期の時代だったのです。したがって現代であれば、80歳前後ということになります。 そうです、時代は平均寿命の延びとともに体力も風貌も若くなったのです。
 この様に考えますと65歳以上を「老人」とした1950(昭和25)年代の感覚と現代の感覚には大きなズレがあると言わざるを得ないのではないでしょうか。

Ⅰ-55 「何歳以上の人が『高齢者』『お年寄り』?」

 「何歳以上の人が『高齢者』『お年寄り』?」なのでしょうか。
 平成15年内閣府調査によりますと、「およそ70歳以上」が48.7%と半数近くを占め最も高く、以下「およそ65歳以上」18.5%、「およそ75歳以上」12.9%、「およそ60歳以上」6.8%、「およそ80歳以上」6.0%等の順となっています。なお、「およそ70歳以上」、「およそ75歳以上」、「およそ80歳以上」を合わせると67.6%と7割弱に達しています。

Ⅰ-56 「60歳代を高齢者と言わない都市 やまと」宣言 ①

 前項で、統計上は65歳以上を「高齢者」としていること。対して一般的には64%の方が「高齢者」と考えていないことを紹介しましたが、このギャップを埋めるような宣言が、平成26年4月1日付けで神奈川県大和市から出されました。
 極めてユニークな宣言ですので大和市のホームページから紹介します。

Ⅰ-57 「60歳代を高齢者と言わない都市 やまと」宣言 ②

宣言の大筋は次の通りです。

◆ 宣言タイトル  
「60歳代を高齢者と言わない都市 やまと」宣言

◆ 宣言内容
・人生80年の時代を迎え、これまで高齢者とされてきた世代の意識も大きく変わり、今では、多くの方々が生き生きと過ごしています。
・家庭や地域を支えている方、職場で頑張っている方など、豊かな知識と深い経験を持つ人材は大和の貴重な宝です。
・こうした方々に、いつまでも、はつらつと元気に活躍していただきたいと考え、ここに「60歳代を高齢者と言わない」ことを宣言します。

◆ 宣言について
 本市では昨年10月末、65歳以上の方が人口に占める割合である「高齢化率」が21%を超えました。日本では1950年代以降、一般的に65歳以上 を「高齢者」と呼んできました。しかし、半世紀あまりが経過した今、平均寿命は大きく伸びており、多くの方々が地域や職場などで活躍されています。
 こうしたことから、市民一人ひとりの健康を目指す「健康創造都市やまと」をかかげる本市は、皆さんにいつまでも、はつらつと元気に活躍していただきたいと考え、 60歳代の方を「高齢者」と言わないことを宣言しました。(以下略)  

大和市ホームページより引用

実に時代に見合った宣言です。