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圓應寺 住職法話

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「臨時法話「平成27年 東日本大震災物故者慰霊・復興祈願法要」開催」

はじめに

 臨時法話として「平成27年東日本大震災物故者慰霊・復興祈願法要」の模様をお届けします。
 大震災から丸4年の平成27年3月11日を前にして、当山・圓應寺において3月7日、27年の法要を行いました。 これまで、四十九日法要をはじめ一周忌、三回忌そして昨年の26年法要と続けてきました。最近、大震災被害の風化がささやかれていますが、最大の被災地の東北三県に最も近い山形にあって「風化だけは何とか!」の想いをこめて今年27年の法要を行いました。
 ただし、昨年までは私自身が真言宗智山派山形村山教区の「教区長」職に在ったことから「教区行事」として実施してきましたが昨年12月、教区長の任期満了となりましたので、今年の法要は「圓應寺」主催という形で実施しました。昨年までは管内寺院に教区行事として参加を呼び掛けて来ましたが、今年は当・圓應寺の法類寺院(寺としての親戚関係にある寺院)と私が教区長時の教区役員寺院にボランティアで参加協力をお願いいたしました。

1.写経に取り組む

写経を前に 般若心経

 圓應寺では今年の法要に向けて、宗派が呼び掛けている「東日本大震災 慰霊と復興に向けて」の写経に再度取り組むことにしました。檀信徒の方々は原則としてご自宅で写経し、法要当日に持参いただく態勢を取りましたが、一部の方には法要当日に寺で写経いただくことにしました。この写真は寺の客殿で写経に取り組む皆さんです。

2. 上堂の鐘

上堂の鐘 時刻を確認する
承仕・茅原英盛 師

 当日、午後2時に「装束の鐘」(「僧侶の方々は、衣袋に着替えてください」の合図)、2時15分に「集会の鐘」(僧侶の方々は集会場所に集まってください)に続き、2時30分に「上堂の鐘」(開式の時刻です、僧侶の方々は会場にお進み下さい)の鐘の音が「カァ~ンカァ~ン」と厳かに鳴り響きます。この鐘の音で場内は一瞬にして静まりかえり、緊張の中で、合掌して僧侶の入堂を待ちます。 写真は手元の時計で正確な時刻を確認し、第三鐘(上堂の鐘)を打つタイミングを見計らっている承仕(じょうじ)役の茅原英盛師です。

3. 会奉行

会奉行・観音寺住職 神尾裕典 師

法要の一切を取り仕切る役割を会奉行(えぶぎょう)と言います。今回は、昨年観音寺の新住職となった神尾裕典師に務めていただきました。会奉行は法要の次第、役割、当日の法要進行などの一切を担当する極めて重要な役割を果たします。神尾師は初めての経験ということで緊張ながらも見事に務め上げました。

4. 主催者代表挨拶

 主催者を代表し、髙橋茂雄圓應寺筆頭総代がご挨拶申し上げました。
 挨拶に続いて、会奉行の経頭により「智山勤行式」を参加者全員でお唱えし、黙祷の時刻を待ちました。

 主催者挨拶 髙橋茂雄 應寺総代

5.黙祷時刻

 午後2時46分。大震災の正確な時刻に全員黙祷をお願いするため、駒林博圓應寺総代が電話機からの「ピッ、ピッ、ピーン」の時刻をマイクを通して場内に流します。
 これを合図に会奉行は「黙祷」を発声、場内は合掌して一分間の黙祷となりました。

 午後2時46分
時報を知らせる駒林博圓應寺総代

6. 写経をご本尊さまに奉呈

 事前に納めていただいた写経、当日納めていただいた写経(協力頂いた地蔵院、地蔵寺、正法寺の計26枚を含む)の合計は207枚に上りました。この貴重な心のこもった写経を先ずは当寺のご本尊さまへの報告を兼ねて奉呈致しました。写経は、今川政弘圓應寺総代より内陣の西林寺住職・奥平昌弘師にそして承仕を通してご本尊さまに奉呈されました。

皆さんから頂いた写経を
西林寺住職・奥平昌弘師(ご本尊に奉呈)に
託す今川政弘 圓應寺総代

7. 務めさせていただきました

 不肖、私が導師を務めさせていただきました。

皆さんから頂いた写経を
西林寺住職・奥平昌弘師(ご本尊に奉呈)に
託す今川政弘 圓應寺総代

8. 僧侶15人、総勢120人のお参りでした

僧侶15人 総勢120人の法要

 お参りには、圓應寺檀信徒の他、助法頂いた寺院の檀信徒をはじめ地域住民の方々、福島から避難されている方々総勢120人の皆さんでした。「15人もの和尚さん達の読経は初めて、すごかった!」と。

9. 60人を越える御詠歌講員

60人を超える講員の御詠歌

 圓應寺の講員(御詠歌をお唱えする支部団体に所属する方を「講員」と言います)をはじめ、他の4支部からも応援いただき60人を越える御詠歌となりました。今年は、真言宗智山派の御詠歌団体である密厳流遍照講の新曲「東日本大震災物故者追悼詠歌」と「般若心経和讃」をお唱えしました。特に「追悼詠歌」は法要の趣旨にピッタリ、心を込めた奉詠に参加者一同、物故者への想いを新たにしました。

10. 癒しの演奏

癒しの演奏 山形マンドリンアンサンブル

 山形マンドリンアンサンブルの皆さんによる「浜辺の歌」と「花は咲く」の2曲が演奏されました。私たち一般のものは、マンドリンの音色に余り接する機会がありません。ましてや今回のように多人数による合奏を聴くことが出来たのは、ほとんどの方にとっては初めてではなかったかと思います。その音色は本堂の隅々迄響き渡り、人々の胸の内しみ入るものでした。
 参加者の方々から「マンドリンの演奏、法要にマッチングしてすごく良かった!」「あれだけ多くの方々が弾くマンドリンの生演奏、初めて!」「選曲が良かった。『花は咲く』も良かったが、特に『浜辺の歌』にジィ~ンと来てしまった」「あんな素晴らしい演奏が聴けるとは思っていなかった」等々の他、避難者からは「演奏を聴いている内に四年前のことから色々思い出されて‥‥、涙を流してしまった」との感激の声が寄せられました。

避難者代表ご挨拶

避難者を代表して佐々木さんのご挨拶

 圓應寺のある山形市立第三小学校区に、福島から放射能汚染を避けて避難されている方を代表し、佐々木由美子さんからご挨拶を頂きました。佐々木さんは「山形に来た時、子供達がごく自然に戸外で遊んでいるのを見て驚いた」こと、「自分達だけ避難してきて良かったのか?」という福島の人たちに対する想い、「いつも声をかけていただく山形の地域の皆さんに感謝」、「今日の法要に参加させていただいて本当に有り難う御座いました」と涙声でのお話しでした。私たちには計り知れない様々なご苦労と心労があることに改めて震災と原発の被害を「風化させてはならない」との想いを強く致しました。

12. 拙僧の法話

拙僧による法話

 最後に「いのちと原発問題を‥考える」と題して、写経・義援金そして参加のお礼を兼ねてお話しをさせていただきました。
 日本はこれまで ①広島、長崎で被爆 ②第五福竜丸の被爆 ③そして今回の福島第一原発事故による被爆。以上3回に亘る核の汚染を受けてきました。これだけの核の災害を受けたのは世界中で日本だけ、福島からの避難者が数多く、困難な生活を強いられている上に、原発事故の後始末も出来ていない現状にあって、原発の再稼働は許されるものではないことを全日本仏教会の声明「負の遺産となる処理不可能な放射性廃棄物を生み出し未来に問題を残しているという現実、私たち全日本仏教会は『いのち』を脅かす原子力発電への依存を減らし、原子力発電に依らない持続可能なエネルギーによる社会の実現を目指します。」を紹介しながら話をさせていただきました。

 ご協力頂いた写経207枚、納経料220,000円、当日の義援金 61,632円を後日、宗務庁に納めさせていただきました。ご協力を頂いた方々に厚くお礼申し上げます。