圓應寺 住職法話
住職法話 第37回
日本社会の現状
【福祉的社会学的考察】37~41
「人口の高齢化」
この項の「Ⅰ 日本社会の現状」から、 「 Ⅴ 仏教に見る祈りと教え」まで、先月で7巡しました。今月から又、 「Ⅰ 日本社会の現状」に戻って現代社会の私達の生活」を見ていきたいと思います。
前回のこの項では人口減少と死亡原因について述べましたが、今回は人口の高齢化について述べます。
Ⅰ-37.進む高齢化
2012年9月16日発表の総務省推計によりますと、65歳人口が初めて3千万人を超え、3074万人(一年で102万人増)となり、総人口の24.1%になりました。これは1947~49年誕生のいわゆる団塊の世代が65歳に達したことが大きな要因です。男女別に見ますと、男性 1315万人(男性人口の21.2%)、女性 1759万人(女性人口の26.9%)となっています。
又、70歳以上の男女人口は2256万人(総人口の17.7%)、80歳以上の男女人口 は893万人(総人口の 7.0%)となりました。 正に高齢化社会ですが、むしろ現代は「高齢社会」そのものと言えるのではないでしょうか。
Ⅰ-38.100歳以上の高齢者
「高齢社会」を通り越して「超高齢社会」とも言えるのが次のデーターです。2013年9月13日厚労省の発表によりますと、100歳以上の高齢者は過去最高の5万4397人、前年比3021人の増加となりました。調査開始の50年前は153人で、なんと355倍となったわけです。
50年前というのは、私が二十歳の頃です。当時、近隣に100歳を超える人の話を聞いたことはありません。100歳まで生きることはそれこそ「想定外」の時代だったと思われます。
当圓應寺の歴史をみますと、100歳(数え年です)を超え方の初めての葬儀は平成19年です。当時の記憶は鮮明で、「いよいよ圓應寺にも100歳の仏さんが出た!」との思いで、ご遺族に「圓應寺の歴史に残る初の100歳!」と宣言し、戒名の頭文字に「寿」を冠したものです。それ以来、100歳を超えた方には原則として「寿」を冠することにしております。
現在、当寺の最長寿物故者は103歳 100歳以上の方は合計5人です。寺参りには多くの高齢者が来られ、90歳を過ぎる方も元気でお参りされます。中にはお参り用の椅子を必要とせず、きちんと座り、前に進み出て正座でご焼香される方もおられます。この様な方を含め、長寿の方には「圓應寺には100歳を超えての仏さんが5人居る、そこまではまだまだ人生は長い、頑張って! ○○さん、最長寿の記録を破って!」等との話をさせていただいています。
さて、日本全体のデーターにもどります。100歳を超える人の男女比は、男性 6791人(12.5%)に対して女性は4万7606人(87.5%)と圧倒的に女性優位です。
人口10万人当たりでみますと100歳以上は42.66人です。ちなみに私の住んでいる山形県は47.31人(全国27位)でした。
Ⅰ-39.一人暮らし世帯の急増 ①
2010年国勢調査速報値によりますと、一人暮らし世帯の割合が初めて3割を突破するとともに、世帯類型(夫婦と子供世帯など)で最多となりました。この様な傾向は、高齢者の一人暮らしと若年層の未婚者の増加が影響していると言われます。私たちの周りを見ましてもお年寄りが一人で暮らしている方は珍しくありません。
そしてその多くは前項の統計が示すように女性の一人暮らしなのです。三世代同居率が全国一の山形県でもこのような実態ですので、大きな問題と言わざるを得ません。一人暮らしが続く高齢者は、人との交わりの機会が少なく、人によっては一日中一言も喋ることがない等という社会的に孤立状態の人もおられると聞きます。この様な方は精神的にも落ち込みやすい状態ですし、もしもの時の不安を抱えながら日々の生活を送っています。特に東日本大震災によって避難生活を余儀なくされている方にとっては大変深刻な問題になっていると聞きます。親戚はもとより地域社会でのつながりを作る手だてが必要とされています。再度全国のデーターにもどりますが、一世帯平均の人数も過去最少となり、2.46人となりました。一昔前は家族の「核家族化」と話題になりましたが、それどころではない小家族化状態になっているのです。
Ⅰ-40.一人暮らし世帯の急増 ②
2013年1月18日国立社会保障・人口問題研究所の発表によりますと、一人暮らし世帯は今後ますます増加し、2030年には、全世帯の37.2%になることが予想されています。この増加傾向は、未婚者の増加とともに離婚の増加が影響しているとのことです。 又、同じ発表によりますと世帯主が65歳以上の世帯は2010年の31.2%が2035年には40.8%に急増することが予想される一方で、「夫婦と子供」の核家族の世帯類型に占める割合は1980年代では40%超でしたが、2035年には23.3%に激減することが予想される事態となっております。
Ⅰ-41.一人暮らし高齢者の人づきあい
前々項で述べた一人暮らし高齢者の人付き合いについて、2010年9月20日付の朝日新聞が2006年の内閣府調査を基に紹介しています。先ず「近所づきあい」についてみますと、「訪問し合う人がいる」と「立ち話をする程度」の方がそれぞれ約3割ですが、「つきあいなし」と「あいさつする程度」の合計が4割弱を占めており、これらの人々は会話らしい会話をしていないことになります。
次に「親しい友人」の存在については、「いない」と「年に数回連絡」を合わせると35%となり、多くの一人暮らし高齢者が孤独又は孤立状態にあり、「39項」で述べた乏しい人間関係にある実態をより具体的に示しているのです。