いかに生き、いかに死ぬか

圓應寺 住職法話

住職法話 第27回

日本社会の現状
【福祉的社会学的考察】26~32

「若い世代の就業関係 非正規労働者の問題」

 この項の「Ⅰ 日本社会の現状」から、 「 Ⅴ 仏教に見る祈りと教え」まで、先月で五巡しました。今月から又、 「Ⅰ 日本社会の現状」に戻って現代社会の私達の生活を見ていきたいと思います。
 今回は前回に続いて若い世代と非正規労働者の問題について述べます。

Ⅰ-26.15歳から24歳までの完全失業率

 若い世代の就労については、学卒者の就活問題としてマスメデヤ等でさかんに取り上げられています。大学生にあっては三年生の秋から「就活」が始まります。その時期に就職が内定していない四年生にとっては大変なプレッシャーとなってしまいます。20~30社に就活するのは当たり前、中には50社の経験者もいると聞きます。この様な状況にあって若い世代の失業率をみますと、15歳から24歳までの完全失業率は、全年齢失業率の2倍程になり、深刻な状態となっています。

 25~34歳についても相対的に高水準の状態が続いており、若い世代の就業状況は極めて深刻な事態にあるのです。
 但し、大学生の就職状況はこの2年間少しずつ改善しています。 最近の文科省と厚労省の発表に因りますと、今年2013年4月1日時点の就職率は、93.9%となり、前年同期の0.3%増で2年連続の改善となりました。 しかしピーク時の2008年に比べますと3.0%下回っています。

Ⅰ-27.非正規雇用者比率の推移

図・非正規雇用者比率の推移(1990-2012)

(注)非農林業雇用者(役員を除く)に占める割合。1~3月平均(2001年以前は2月)。非正規雇用者にはパート・アルバイトの他、派遣社員、契約社員、嘱託などが含まれる。数値は男性及び女性の総数の比率。2011年は宮城・岩手・福島を除く。
(資料)労働力調査

非正規雇用者比率の推移データ
社会実情データ図録より

 パート・アルバイト・派遣等の非正規労働者の割合が各年齢、男女で上昇しています。
男性平均では、1997年に10%を超え、2011年には20.1%に達し、女性の平均では2003年以降、半数を越えてしまいました。
特に、男女とも15~24歳の若者の非正規比率が急激に高まっており、男性は4割超、女性は5割を越える異常な数値となっています。
65歳以上の高齢者、特に男性の非正規比率が高くなっていますが、これは定年後継続雇用される割合が高くなっているためと考えられています。
女性はアルバイトの多い若年層から25~34歳になると正社員になる比率が高まりますが、35~49歳ではまた平均以上に非正規雇用比率が高まってしまいます。これは結婚、出産で退職した女性が再度就業する場合に不安定な雇用となっている状況を示していると思われます。

Ⅰ-28.日本社会の現状 正社員に対する非正規社員の賃金割合

 一般的に年齢が上がれば収入が増加する正社員に対して、パート・アルバイトはほとんど上がらず、横ばい状態となっており、正社員と正社員以外の雇用形態との賃金格差は、年齢が高くなるにつれ広がっていきます(45~54歳では正社員の半分以下)。

平成23年賃金構造基本統計調査結果-賃金格差(全国)

Ⅰ-29.日本社会の現状 正規・非正規別の結婚比率

正規・非正規別の結婚している比率(男性雇用者 02年)

正規・非正規別の結婚比率
社会実情データ図録より

  大分古い資料ですが、男子労働者の正規、非正規別の有配偶率を年齢別に見ると、非正規労働者の有配偶率は、正規労働者の半分前後となっています。若者の失業問題、そして非正規労働者の増加、経済的不安、・生活不安が非婚そして少子化につながっているのです。

Ⅰ-30.日本の富裕層

スイス金融大手クレディ・スイス調べ
引用 2012.10.23 山形新聞

 スイス金融大手クレディ・スイス社調べによる2012年の世界富裕層国別ランキング調査によると、純資産100万ドル以上の富裕層は米国がダントツの一位で1102万人ですが、日本は第二位で358万人です。
 不況・デフレの中にあって前年比8万3000人の増加です。日本社会は富める者とそうでない者との格差が拡大しているのです。

Ⅰ-31.格差社会の拡大

 この格差拡大についてもう少し詳しく見てみたいと思います。1990年頃までの日本社会は「総中流社会」と言われましたが、その後は正規・非正規雇用者問題を含め、「格差社会」と言われるようになってしまいました。具体的に見ますと。
①二人以上世帯で預貯金等を持たない世帯は22.3% ②預貯金の保有金額平均は1,169万円 ③しかし無保有世帯を除くと1,542万円 ④単純な順位での真ん中は500万円ですが、無保有世帯を除いた真ん中は820万円です。つまり一部の富裕層が平均を引き上げており、大半は平均以下が実態なのです。(2011.2.17 山形新聞)

Ⅰ-32.日本の子どもの相対的貧困率

主要国の貧困率調査(OECD調べ)
引用 2012.10.23 山形新聞

 私たちには「豊かな日本社会」というような想いがまだまだあるのではないでしょうか。しかしその実態はこれまで見てきたように非常に厳しい社会というのが現状なのです。この厳しい実態は、子どもを取り巻く状況にも厳しい実態として及んでいます。
 2009年10月8日朝日新聞によりますと、相対的貧困率(17歳以下の子ども全体に占める「中央値の半分に満たない17歳以下の子ども」の割合)は14.9%で、OECD30ヵ国中4番の高さとなっています。これは親の貧困=子どもの貧困ということを意味しており、けして「豊かな日本社会」とは言えないのが実態です。子どもの貧困は子どもに多大の影響を及ぼします。
特に顕著なのは学歴に及ぼす影響です。このことについては昨年24年3月の「Ⅰ-9 親の年収が進学率を左右」で述べたとおり、所得の格差は進学(教育を受ける機会)の格差となってしまうのです。一人親世帯の子供は58%が「貧困」層に位置し、より深刻な実態となっています。所得格差と教育格差の固定化が進んでいるのではないでしょうか。

 次回のこの項では、人口問題について述べたいと思います