いかに生き、いかに死ぬか

圓應寺 住職法話

住職法話 第25回

日々の生活の質をいかに高めるか
【生活の質の考察】16~22

「名のある人々の発言 3」

この項の先回に引き続き、「名のある人々の言葉」の紹介を続けます。

 東日本大震災以降、それまで余り耳にしなかった人と人の絆の大切さが叫ばれています。現代社会の希薄な人間関係を背景にしているのでしょうか。いずれにしても日々の日常生活に於いて、私たちは自分一人で生きていくことは不可能であり、多くの人々と関係を持ちながらの毎日です。その人間関係の多くは人々に向き合う態度や言葉をもって成り立ちます。自分の気持ちを伝え、相手の思いを聴くことが基本となります。
 その際、自分の主張ばかり述べて相手の話を余り聴こうとしない対応では、よい人間関係、ましてや絆は生まれないでしょう。とかく頭が切れ雄弁家と言われるタイプの人にこの傾向があるように思います。よき人間関係の第一歩は、相手の話をよく聴くことです。よく聴いてもらった相手は満足し、逆にこちらの話もよく聴いてくれることになります。

Ⅳ-17. 「上手な聴き方」には五つの原則 ①

桜島の噴火

 広島大学病院・佐伯先生によりますと、「上手な聴き方」には五つの原則があることを提起しています(佐伯先生が山形県で講演された時の「講義資料」)。 日頃私たちが何となく感じていることをまとめていただいた感じがしますので、紹介いたします。
 その第一は「80対20の法則」です。
 オレがオレがといった自分中心の会話ではなく、相手に80%喋っていただき、自分は20%にとどめなさいと言うことです。逆に言えば、会話の8割は聴き役に徹しなさいということです。
 時として頭脳明晰・雄弁の方は、自分の主張をトクトクと述べる傾向があるのではないでしょうか。自分 の意向はまず置いて、相手の話をじっくり聴くことが肝要です。

Ⅳ-18. 上手な聴き方の五原則 ②

東海道新幹線より

 その第二は「相手の話を奪い取らない」ことです。
 相手が話し出して直ぐ、自分の価値観や視点を持ち込み、自分のペースで話を進めてしまうことはありませんか。せっかくしゃべり出した相手は、口をつぐんでしまうことになります。
 又、3~4人等のグループで話している場合でも、話の筋と関係ない、あるいは突然飛び跳ねた話を持ち込む人がおります。そして突然自分の話にその場の話を強引に持ち込んでしまうのです。グループメンバーは思わず目を合わせ、「またか?!」と。
 個性の強い人に目立ちますが、他人(グループ内)の話を聴いていない人、自分にのめり込んでしまっている人、そして年上・上司にもこの傾向があるように思うのですがどうでしょうか。

Ⅳ-19.上手な聴き方の五原則 ③

平安神宮

  第三は「相手の話をすぐに否定しない」ことです。
 この第三から第五(下記)までは、特に日常生活上に於いてのものであり、討論や勉強の場は想定していないと思います。
 会話の中で誰かが話し出した場合、その話を最後まで聴かず、途中で遮って「それは違う!○○だ!」と。いきなり話が否定されますと、それ以上話が続かなくなってしまいます。
 自分の考えと異なる場合は、じっくりと聴いて確認した上で、異なる意見をのべる必要があるのです。

Ⅳ-20.上手な聴き方の五原則 ④

銀閣寺

  第四は「相手の言うことを即座に肯定する」ことです。
 第三の「相手の話をすぐに否定しない」だけではなく、先ずは相手の主張を受け入れることが大切ということです。小さい点で自分との意見が違っているとしても、大筋で同意見であれば先ずは肯定することで、相手と同じ土俵に立つことが大切なのです。このことによって相手は安心できて心を開くことができます。そして小さな相違について互いに相談できる状態になるのです。

Ⅳ-21.上手な聴き方の五原則 ⑤

銀閣寺

 第五は「相手の反論に反論しない」ことです。
 日常会話の中で激論は必要ないでしょう。些細なことでどちらでもよいようなことについて、「反論に反論」では日常会話は成り立ちません。受け止めて会話を楽しんではどうでしょうか。

Ⅳ-22.上手な聴き方

 14年連続で3万人を越える自死者(平成24年は27,766人)の背景には、その10倍に当たる自死未遂・自死企図者がいると言われています。
 単なる元気づけは逆効果です。相手の気持ちをしっかり受け止める「上手な聴き方」が必要とされるのです。
この件についてはこの項の次回に考えてみたいと思います。