圓應寺 住職法話
住職法話 第22回
日本社会の現状
【福祉的社会学的考察】21~25
「若い世代の就業関係」
『皆様と共に新年を迎えることが出来たことに感謝しております』
この文言は、私が出した年賀状冒頭の挨拶文です。2010(平成22)年までは、「新年おめでとうございます‥‥」の文でしたが、大震災と原発被災の影響がまだまだ大きく残る現在、昨年同様に「おめでとう」という言葉は控えているところです。
さて、この項の「Ⅰ 日本社会の現状」から 「 Ⅴ 仏教に見る祈りと教え」まで、先月で四巡しました。今月から又、 「Ⅰ 日本社会の現状」に戻って現代社会の私達の生活を見ていきたいと思います。今回は就業関係、特に若い世代を中心に述べます。
Ⅰ-21.日本社会の現状 ~若者の離職率~
◆中・高・大卒者の入社3年以内の離職率
以前は
中学生:7割
高校生:5割
大学生:3割
で「七・五・三」現象と言われたが近年は減少傾向に。
正社員としての再就職困難のため?
最近まで中学・高校・大学卒者の3年以内の離職率は、7割・5割・3割で「7・5・3」現象と言われましたが、2012年6月厚労省発表によると大分「改善」しているようです。しかしこの改善は、厳しい就職関係の中で、「正社員として再就職が困難」という裏事情もあるようです。加えてよく考えてみますと「7・5・3」からは下がったものの大変な割合で離職している実態に余り変わりはありません。前にも述べましたが以前の日本社会は、一度入社すると定年までその会社で働くという「終身雇用」でしたが、現在の就労実態は極めて流動的と言わざるを得ません。
不安定就労は、当然事ながら生活そのものを不安定にします。結婚できないことや少子化、そして目立つ若者の自殺者(後述)の一因がここにあるのではないでしょうか。
Ⅰ-22.日本社会の現状 ~下宿する大学生の生活費~
◆下宿大学生の生活費
- 仕送り・アルバイトの総収入 平均11万8900円
4年連続で減少 - 仕送り平均 7万1310円 5年連続で減少
5万円未満 25%超
仕送り ゼロ 約0%
●30年前の水準に落ち込む
全国大学生協連「学生生活実態調査」(2011年)によりますと、下宿学生の生活費は1990年以降で最低の金額になってしまいました。その内容を見ますと、仕送りとアルバイトの総収入が118,900円で4年連続の減少です。内訳は、仕送りの平均は71,310円で5年連続の減少。更に仕送り5万円未満が25%、仕送りゼロも10%になっており、30年前の水準に落ち込んでいます。仕送りの減少は厳しい保護者の生活を現しています。この保護者の実態は、第12回(12年3月)の「親の年収が進学を左右」を参照下さい。
又、総務省発表による2012年9月時点の生活保護受給者数は312万3905人、受給世帯は155万7546世帯となり、共に過去最高となっています。生活保護受給者数の増加イコール仕送り現象とは言えませんが、このように厳しい経済状況がその一因となっていることは間違いないと思われます。
Ⅰ-23.日本社会の現状 ~就活失敗し自殺する若者急増~
2011年10~20歳代の若者就活失敗での自殺者は
150人(07年の2.5倍)
大学生に限定すると
52人で07年の3.2倍
ところで我が国の2011年の平均寿命がこれまでの数値を大きく下回りました。女性は、前年比-0.40歳の85.90歳、男性は同-0.11歳の79.44歳です。女性は26年間世界一の記録を香港に譲り第二位に、男性も前年の四位から八位に転落してしまいました。厚労省は「大震災と20代女性の自殺増加が影響」と見てます。大震災の影響は甚大です(1万9000人に及ぶ死者・行方不明者)が、20代女性の自殺増加が平均寿命低下の一因に上げられていることは注目です。未だ、正式データーは発表されていませんが、2012(平成24)年の自死(自殺)者がようやく3万人を下回るのではないかと言われる中、20代中心の若者に対する自死、そして就労対策の必要が求められのです。
Ⅰ-24.日本社会の現状 ~過去最悪の若者失業率~
少し古いのですが、総務省の2010年7月30日発表によると、15~24歳の失業率は、過去最悪の11.4%(62万人)。学卒未就労者19万人(前年比2万人の増加)となっております。就業問題は、とかく中高年の問題と思われますが、若い世代の問題でもあるのです。最近の就職内定率は、求人側と求職側の「ミスマッチ」と言われた状況に変化の兆しがあり、やや「改善」気味ですが、予断を許さない状況に変わりはないようです。
Ⅰ-25.日本社会の現状 ~夢持てない若者 収入 年金 仕事~
この厳しい状況の中 2012年5月3日、12年版「こども・若者白書」の15~29歳を対象にした「働く事への不安に関する調査」(複数回答)によりますと、働くことに対して「不安」と答えた人の82.9パーセントが「十分な収入が得られるか」。「老後の年金がどうなるか」81.5%。「きちんと仕事が出来るか」80.7%。「そもそも就職できるのか、仕事を続けられるのか」79.6%という状況にあります。 日本は世界一の安全国で治安が最も良い国と言われていますが、最近は理由がはっきりしない犯罪、あるいは定職を持たず生活や将来に対する不安と不満を基にした犯罪が目立つようになりました。ここにも若者世代に対する就労の国家的対策の必要性が求められているのです。
次回のこの項では、もう少し就労の実態と子供の生活について述べたいと思っております。