圓應寺 住職法話
住職法話 第187回
日本社会の現状
【福祉的社会学的考察】209〜213
「生活保護行政に関する問題」
この項の「Ⅰ 日本社会の現状」から、「Ⅴ 仏教に見る祈りと教え」まで、先月で37巡しました。前回のこの項では生活保護、その給付額の引き下げと最高裁判決、そとしてその後の国の対応等についての後半を述べました。今回は、実際に生活保護利用者と直接的関係にある自治体の窓口の対応問題を取り上げます。
Ⅰー209 生活保護行政に関する問題 ~群馬県桐生市 ①~

生活保護、特にその行政的問題については、この項の第97回(2019年4月)と102回(同年9月)でも取り上げ、小田原市の威圧的ジャンパー問題、保護費削減とその影響について述べましたが、看過できない群馬県桐生市の保護行政の問題が2025年2月6日付朝日新聞で公表されました。同紙は「半減した生活保護利用窓口でなにが」との見出しで概ね次のように問題を指摘しました。
◆桐生市の生活保護利用者は2011年度の1163人をピークに翌12年度から減少。22年度には547人と半減。同じ時期に保護率が横ばい・増加傾向だった全国や群馬県全体のデータとは異なる
◆際立つのが母子世帯。11年度には26世帯だったが22年度には2世帯と13分の1に
Ⅰー210 生活保護行政に関する問題 ~群馬県桐生市 ②~

◆窓口の実態はどうだったのか
・県監査報告は「手持ち金や預貯金がわずか、けがや病気で就労できない、家賃・税金の滞納があるなど急迫した困窮状態と思われる相談者が申請にいたらず、その理由がよみとれない」などの事案が複数あったとの指摘を紹介
・世帯収入が生活保護を受ける基準となる最低生活費以下なのに、「家族で協力すれば困窮に陥らないことが確認された」との記載
・高齢の妹から仕送りを受けることを前提に却下となっているが、その妹の年金収入が最低生活費以下だった。等々の指摘。
◆何故このような事態に?市が設置した第三者委員会の調査によると、職員の回答は
・「管理職から職員への厳しい指導があった」(職員)こと
・「保護開始とならない対応を推奨するかのような雰囲気」
・「ハラスメントまがいの上司の態度」、など
◆結論として、
・福祉事務所の指導・対応などに「不適切なものがあった」と、約6割の職員が認めたことを踏まえ
・「『水際作戦』と呼ばれる、窓口での不当な申請抑制が行われていた疑いが強い」と結論づけています。
Ⅰー211 生活保護行政に関する問題 ~三重県鈴鹿市 ①~

◆2025年8月31日付山形新聞に「三重・鈴鹿市生活保護申請の際財布確認現金出させる」と題して、次のような内容と問題を掲載しました。同紙は鈴鹿市が生活保護申請の際、「財布にある現金を箱に出させ、1円単位で確認していることが30日、関係者への取材で分かった。厚生労働省によると、申請時には資産や収入を報告するよう求めるが、財布内まで調べる規定はない。近隣の自治体では申請者の自己申告にとどめている。申請者から『惨めな気持ちになった』という声が上がり、専門家は『必要性がなく、申請をためらわせる恐れがある行為だ』と批判している」と。さらに「市によると訪れた申請者全員に対し、窓口に用意した箱に、当日記帳した預金通帳や身元を示す書類とともに、財布内にある硬貨を含む現金を全て出すよう求めている。少なくとも5年以上前からこうした取り扱いをしている」と報道。こうした市の対応について同紙は、専門家の見解として「生活保護に詳しい花園大の吉永純教授(公的扶助論)は『通常、自己申告と実際の所持金が大きく食い違うことはない。恥辱感を与える行為だ』と指摘した」と紹介している。
Ⅰー212 生活保護行政に関する問題 ~三重県鈴鹿市 ②~

◆同年9月2日付朝日新聞にも同様の記事が掲載されました。同紙は、「三重・鈴鹿市生活保護申請財布の中身出させる」と題して、山形新聞報道とほぼ同じ実態を説明した上で、「実効性は疑問」と題して、社会福祉学の立命館大准教授・桜井啓太氏の「手持ち金の確認は自己申告で十分。家に置いてくれば正確に所持金は把握できず、実効性は疑わしい・~中略~生活保護の申請は心理的ハードルが高い。財布の中身を目の前で確認することで、申請に来た人の尊厳をいたずらに傷つける恐れがある」との見解を掲載しました。
◆その後、同年9月5日の朝日新聞によると、上記鈴鹿市の受付窓口での対応を改めたとの記事が掲載されました。同紙は「三重・鈴鹿市、財布チェック見直し」と題して、「同市は4日、運用を改めると発表した。8日から、所持金については『自己申告制』にする」とのことです。少なくとも5年前からの現金確認が他の市町村と同じ自己申告制になったということです。当然の行政対応です。
先に、群馬県・桐生市における申請窓口の対応問題を紹介したが、同質の問題が鈴鹿市にあるのではないでしょうか。申請窓口は申請者とそれを受ける市町村職員との最大の接点の場です。申請者(住民)の立場をよく理解した行政の対応が何よりも求められるのです。
Ⅰー213 憲法と生活保護

繰り返しになりますが、生活保護制度は、憲法第25条の生存権を具体化した法律です。25条には「(1)「すべて国民は健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」(2)「国は、すべての生活部面について社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」と、規定しています。これは国民には生存権があり、国には生活保障の義務があるということです。したがって国、それを具体的に運用する行政当局には重大な責任が求められるのです。
生活保護は、私達国民の生活上の最後の砦なのです。もっと大きく言えば、日本国憲法の三原則である。①国民主権②平和主義③基本的人権の尊重の一角を成す25条の精神を踏まえ、守り、育てていかなければならないと思うのですが、いかがでしょうか。
